「俺…、ずっと前から、おまえが好きだったんだ…っ!」
「え?」
「ダメだってのはわかってる…。でも、どうしても伝えたかったんだ。」
3月14日。今日はバレンタインデーから一ヵ月後のホワイトデーだ。私は彼氏がいるからチョコを作って渡した。そして今日は返ってくる日だ。何くれるのかなーと思っていれば、隣のクラスの男子に呼び出された。「話がある」って言われて腕を引かれたので、しょうがなくついていった。で、冒頭に至る。
「ごめん…だけど、好きになってくれてありがとね!嬉しかった。」
「!…あぁ。」
「んじゃ、戻ろっか。」
「ちょい待て。まつげついてんぞ、目、つむれ。とってやるから。」
「本当?ありがとう。」
うわ、恥ずかしい!なんて思いながら目をつむる。そして、何かが近づいてくるような感じがした。まぁ手でしょ。なんて軽く思ってた私がいけなかった。
「っん、!?」
「ふぅっ、んぁ…!」
彼氏以外の人に、キスされることなんて無かったから、予想外のことに思わず口をあけてしまった。その隙間から舌がぬるりと入ってきて、口内を犯される。
やだやだやだ…!自然と零れ落ちた涙は相手を誘うだけだった。
「…っ、やらしー顔。」
「ふぇ…っ、はぁっ、はぁ…っ、」
再び塞がれて、今度は服の中に手が伸びてきた。もう無理だ。そう覚悟を決めたとき。
「…人の彼女襲っていいと思ってるのかい?」
「せ、せ…いちぃ…っ!」
息を切らした彼氏──幸村精市──が、呼び出した男子を蹴り倒していた。
「聞いてるのかい?おまえ、馬鹿だろ。俺の彼女に手を出したってことは、」
学校を敵に回したっていうのと同じだよ?いつもより低く、怒気の含まれた声で発せられる。…怖い。
「す、すまねぇ、それだけは、許してくれ…!」
「はぁ?あれだけキスして挙げ句の果てに犯そうとしたんでしょ?まず犯罪だよね。」
「…精市、怖いよ。」
「なまえ、おまえは危機感がなさすぎるよ。だからこんなことになるんだ。」
「う…っ、ごめんなさい」
なぜだか急にぽろぽろと涙が零れだして止まらなくなってしまった。精市には笑顔を向けたいのに、拭っても拭っても涙はとまらない。止まってくれないことでまた涙が込み上げてきて、嗚咽を漏らしながら泣いてしまった。泣きたいわけじゃ、ないのに。
はぁ…精市のため息が聞こえてきてぴくりと反応してしまう。こんなめんどくさい彼女、いらないよね。ごめんなさい、謝るから、別れるなんていわないで…!
「…なまえ、」
「ひっく…、ふぅ…っ、」
ふわりと何かに包まれるような感覚に襲われた。驚いて顔を上げれば、すぐ近くに精市の青い髪が見えた。抱き締められてると理解するまでに、少し時間が掛かった。
「…なまえの泣き顔なんて見たくない。」
「!…ごめ、なさ…っ!」
「怒ってるわけじゃないって。だから、泣き止ませてあげるよ。」
ふってくるキスの嵐。軽いキスから、だんだんと深く、何度も何度も角度をかえて。飲み込めなかったどちらのとも分からない唾液が口元からつたう。
最後にリップ音を立ててキスをされ、精市は後ろを振り返った。
「…ねぇ、いちゃいちゃしたいの、分からない?」
「…っわわわ悪かった!」
私を呼び出した男子は、ずっとそこでフリーズいていたらしく、精市が声をかけたら走っていってしまった。人間、逃げ足は速いよね。
「なまえの、馬鹿やろー。」
その言葉にむっとしたけど、悲しそうな顔に何も言えなくなってしまった。
「…っ、心配した。」
「ごめん。」
「教室いったらいないし、聞いたら連れてかれたっていうし、」
「うん。」
「見つけたと思ったらキスされてるし、顔真っ赤にして泣いてるし。」
「……。」
「あれは誘ってるようにしか見えないよ。ヤってるときとおんなじ顔しないでよ。本当、こっちがもたなくなるだろ。」
「精市話がおかしいよ」
「なまえは全部俺のモノなんだから、俺以外にあんな顔見せないで。」
「!…ふふっ」
つまりは独占欲。
ホワイトデー。+地震の被災地の皆様の気分転換なんかになりますように…!