四天宝寺 短編 | ナノ

第三次世界大戦――。
それは静かに始まった。一般市民には分からない、水面下で。
でも、確かにそれは行われていて、今日も俺は戦場を走る。


“ヴゥーッ!!ヴゥーッ!!”


どうしてこんなことになったんだ。
誰も教えちゃくれないんだ。

「おめでとう、君は選ばれたんだ」

「国のための正義なんだよ」

「多少の犠牲は仕方がないさ」

何が“セイギ”だ。何がギセイ“だ。


週末に俺の家に届いた1通の知らせ。“秩序”は俺を裏切った。

「出動命令!出動命令!」

「チッ、またかいな!!」

初めは小さな穴だったらしい。各国が自分の国の利益のために好き放題やりだした結果、こういうことが起こったと。
難しいことなんかわからへんけど、どうして俺がこんな目に…。


つなぎを着直して、ゴーグル装着。


お互いの相対関係で成り立っていたはずの世界がいつの間にか絶対的に回り出す。都合の善すぎた大人たちの都合に過去の過ちを再び繰り返す。

戦争を始めて…。

原爆を落とし…。

人々から自由を奪った…。


「3…、2…、1…、GO!!」


そうやって、ちょっとずつ。みんな気づいてへんけど、何かが変わっているんや。町が消えて、国が消えていく。日本も既に少しずつ衰退し始めている。


轟音が轟く戦場を、ミサイルを背負い駆け回る。


『よい週末を!!』

俺の最後の日常に、いつものように笑ったあの子には悪いけど、俺にはもう週末はこないやろ。終末の方が先に来るだろうから。


残された空間で俺はうかつに肘さえ付けはしない。


理想に囚われた大人たちの言いなりに何かなりたくない。
でも、何も信じられなくなった俺たちは、何を信じて生きていけばいいんや?


包囲網を掻い潜り、レジスタンスを一斉掃射。


「ハガネに撃ち込め!」

と、大人たちの警告。無言の圧力と数の暴力。
常に俺たちは監視されていて、自由は亡くなった。大人たちに刃向かっていった奴等は、みんな殺された。


ミサイルを放つ。肩越しに響く断末魔。


もし、死ぬ前にこの戦争が終わっても、どうせあの場所には戻れない。もうテニスは出来ないだろうし、あいつらと笑いあうことだって出来ない。あの子にも会いにはいけない。だって俺は“ヒトゴロシ”だから。


残された空間で俺は今日もぐっすり眠れやしない。


だったら、どうせ死ぬなら、世界中を敵に回してでも、戦うんだ。
たとえ裏切られたとしても、俺は“秩序”を裏切らない。


「Good Luck!」


でも、言葉で表現しきれない俺たちの気持ちに、いつか誰かが絆されることが、許せなかった。


ぼくらの16bit戦争
(世界の終わりは、まだ来ない…。)

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