四天宝寺 短編 | ナノ

『“最終に間に合ったよ。0時前にはそっちに着くよ。”っと。』

今日は久々に謙也のいる大阪に向かいます。
東京の大学に来ていた謙也と付き合い始めてから4年。謙也は大学を出てから大阪に帰ったので、今は東京と大阪で遠距離恋愛中。仕事の後に新幹線に乗ってたまに謙也に会いに行きます。

『メール、短すぎたかなぁ…。』

いつもこんな感じだけど、素っ気ないっていうか…。

“分かった。駅まで迎えに行くわ。”

ほら、謙也の返信もこんなもの。何か、愛を感じないなぁ…。


新大阪駅まで迎えに来てくれた謙也は…、いつも着てるスウェット姿。今日も家へ直行かぁ…。

『久しぶり、元気やった?』

「おん。名前も元気そやな。」

『元気やで!!』

謙也の前では出来るだけ大阪弁…ぽいものを話すようにしてる。何度来たって上手にはならないけど…。

『万博公園の太陽の塔、久々に見たいなぁ…。明日、たまにはいい?』

「そやなぁ…。」

って、行くの!?行かないの!?楽しそうにしてたってあなた以外に連れはいないのに…。
大阪は近そうでまだ遠い、か…。


『謙也…。』

「ん?何や?」

『ん…、何でもないや。』

「さよか。」

毎週は会えないから、ケンカだけはしたくない。だから、言いたいことも言えなくて黙ってしまう…。この空気が、通いなれた道をいつもより長く感じさせる。御堂筋はこんな日も、一斜線しか動かない。
何度ここへ来てたって、「一緒に住まへんか?」言ってくれない。その一言、待ってるのになぁ…。

『家に着く前に何か飲むもの買ってこようか?』

空気に耐え切れなくて、気分変えようとしてるのに!!

「そやなぁ…。」

って、要るの!?要らないの!?謙也と会えて嬉しいし、楽しいけど、それは内心メッチャ寂しいんだけど…。
大阪は近そうでまだ遠いなぁ…。


次の日も、その次の日も、謙也は何にも言ってくれなくて…。
大好きな謙也が、大好きな大阪。謙也が好きなものはあたしも好きだし、これからも共有していきたいなって思ってるけど。お互い行き来するとはいえ、東京と大阪は遠すぎる…。

「名前もいつかあんなおばちゃん達になるんやろうな〜。」

商店街で買い物してたら、謙也に言われてみた先には、お約束どおりの豹柄のおばちゃん達。
…そんなの、いつかじゃなくて今からだってなれるものならなりたいよ!!

『覚悟はもうしてるって!!大阪のおばちゃんって呼ばれたいんよ!!』

…謙也と一緒にいたいんだって。

『家族と離れてたって、あなたとここで生きて行きたいんよ!!』

…謙也だってあたしの家族だもん。

『東京タワーだって、あなたと見る通天閣には適わへんよ!!』

…謙也がいればどんなものだって素敵に見えるじゃない。

何て言うことを、謙也は予想してなかったんだろうな…。だって、ポカンとした顔のまま固まって、次の瞬間には大笑いをし始めた。

「ハッ…、ハハハ…、アーハハハー!!」

『なんでそんなに笑って!!一生に一度の告白やんか!!』

…恋しくて憎らしいね、大阪。

「す、すまん。ハハハ…。」

『まだ笑っとるし…。』

「だ、大丈夫やって。…他にも言いたいこと、言うてみ?」

『何度ここに来てたって、また来るのは謙也がおるからやもん…。』

「知ってるわ。」

『楽しそうにしてたって、それは謙也がここにおるからやもん…。』

「それも知ってる。」

『どんだけケンカしたって、謙也だけほんまに大切やもん…。』

「…おおきに。」

『“もうこっち来いや”って言って!!あぁ…、催促してしもたやないの…。』

「…そうゆうことか。」

あぁ!!言って貰えるの待ってるつもりだったの…、ついつい言ってしまった…。あぁ、もう嫌だ。すごい嫌な女になってる気がする…、謙也には嫌われたくないから、黙ってようと思ってたのに。あぁ〜、もう!!

「名前。」

『…なん?』

「不貞腐れるなや。大阪、好きか?」

『…好きや。でも、謙也のが好き。』

「俺も、名前が1番好きや。せやから、一緒に住もか?」

『…おん!!』


その一言を待っていた!!
(ほな、まずは大阪弁の練習からやな。)
(あたしを大阪人にしてください!!)

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