四天宝寺 短編 | ナノ

『進路調査表だって…。どうするの、謙也?』

「あ〜ぁ…知らん。」

中3になって最初のHRで配られたのは、進路調査表と書かれた紙。隣の席の謙也に聞けば、何とも適当な返事が返ってきた。

『知らんて、あんたね…。受験は今年でしょ?』

「先のことなんてわからへんやろ。大事なのは今や、今。」

『そうだけどさ…。』

確かに、謙也の言ってることはそうなんだけど…。っと、いうより、こいつはテニスバカだから、そっちの方が大事なのかも知れない。…でも、現実的に考えれば、いつまでも、そんなこと言ってられるはずが無くて。

『…って、何してんのよ、ちょっと。』

「紙飛行機。見りゃわかるやろ。」

『分かってるから言ってんのよ。出さない気なのね…。』

「まぁ、やろうと思えばなんとでもなるやろ!!」

『…後で泣きを見る羽目になっても助けてあげないからね。』

いつもテスト前に世界史が〜!!って泣き付いてくる謙也なのに、受験前になって何とでもなるような子になるはずが無い。

「名字もまだ決めてへんのやろ?自分の分も紙飛行機折ったろか?」

『何で紙飛行機を謙也に折って貰わなきゃらならないのよ。』

「後で、屋上で飛ばそうかと思って。自分もやらへん?」

先のことなんて、わからない。でも、そんなに先のこと何かじゃない。分かってるけど、まだ、このままでいたいって思ってる。

『って、あぁ!ちょっと、もう折ってるし。』

「どうせ決まってへんのやからええやん。」

『…まぁ、いいか。』


階段を駆け上がる。
片手には紙飛行機。隣には、同じく紙飛行機を持った君。

「ほないくでー!!」

『せーの。』


飛んでけ、紙飛行機!!
(私達の未来まで。)

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