バレンタイン。――それは、女の子が好きな男のために戦いを繰り返す聖なる日。
「―っと、いうことで、チョコが欲しい。」
『…そんなドヤ顔で言われても、何とも思わないし、用意もしてないよ、白石。』
「何でや!?甘いチョコと一緒に、甘い告白を俺にするんやろ!?」
『…まぁ、チョコはないから、煎餅はあげるけど。何で白石に告白なんかしなきゃいけないんだし。』
「照れなくてもええんやで!マイスイートハニー!!」
『誰が照れるか!…もう勝手にしてくれ。』
学校に登校そうそうやってきたのは、ドヤ顔で変態発言をした白石。ちなみにこんな奴が、悲しきことに我がテニス部の部長である。
友チョコ。――それは、女の子同士が友情を確かめ合う友情の証。
「―っと、言うわけで、名前ちゃんに友チョコをプレゼント♪」
『小春ちゃん…!!私からもチョコをプレゼントさせてください!!』
「あら!ありがとうね、名前ちゃん。」
「小春ー!!俺には!!」
『いいだろー、一氏。』
「小春!小春!」
「うっさいわ!一氏!」
「小春ぅー!!」
その後やってきたのは、私の大好きな小春ちゃん。と、その後ろをついて回る一氏。我がテニス部一有名な通称ラブルスである。
義理チョコ。――それは、普段お世話になっている人に渡す感謝の印。
「―っと、いうわけで、義理でもいいから、チョコを下さい。」
『…そんなに欲しいのか、チョコ。用意してないけど。』
「欲しい。メッチャ欲しい。何で小春にはあって俺らにはないんや。」
『あれは友チョコ。女の子同士があげるやつ。謙也達には義理チョコをあげる義理も無いってことよ。』
「なん、やと…!!」
『そのかわりに義理せんをあげよう。』
「チョコやないん!?」
「#名前〜。チョコ〜。」
『グヘッ。何すんの千歳!首絞まる…!!』
「チョコ欲しか〜。」
『可愛く言ったって、無いものはない!煎餅あげるから、離れてー!!』
「煎餅でも嬉しか〜。」
またやってきたのは、土下座でチョコくれとか言い出した謙也と、後ろから抱きつく形で首を締めた千歳。こんなのが、我がテニス部一戦力になる奴等である。
善哉。――それは、俺の好物である甘味。
「―っと、言うわけで、善哉だせや。」
『何か…、いろいろどうなの、財前。まぁ…、作ってはあるけど。』
「ホンマに!?おおきに、先輩!!」
『いやいや、キャラ変わりすぎだろ、何なん?』
「ふぇんふぁい、うふぁいふぅわ〜。(善哉、うまいっすわ〜。)」
『…もう食べてるし。』
今度は、我がテニス部の天才と言われる財前。生意気な態度ではあるが、どうやら中身はまだまだ子供である。
たこ焼き。――それは、ワイの大好物や!
「―って、ねぇちゃんに言うたらたこ焼きくれるって、財前に言われたんや!」
『…財前のやつ。まぁ、金ちゃんにもたこ焼き用意してあるよ。熱いから気をつけて。』
「たこ焼きや〜!!ねぇちゃん、おおきに!!…あつっ。」
『だから気を付けてっていたでしょ〜。さっき作ったところなんだから。』
「ワイの為に作ってくれたん!?ねぇちゃん好きや〜!」
『ッ!!私も好きだよ、金ちゃん!!』
そして、我がテニス部一の問題児金ちゃん。まだまだ子供で可愛いけど、余計なことまで覚えてくるのは純粋さ故か。
本命チョコ。――それは、好意を寄せている相手に贈る、本当のチョコ。
『―っと、いうことで、師範と小石川にプレゼント!』
「俺等にまであるんか?」
「わざわざすまんな。」
『普段お世話になってるから。チョコ用意したのは2人だけだよ。義理じゃ足りないから、本命にしました。』
「ほ、本命チョコ…。そんなん初めて貰ったわ…。」
『本命だよ、ラブではないけど〜。』
「感謝せなならんのはワシ等の方や。いつもすまんな。」
『いやいや、好きでやってる仕事ですから。』
こちらは、我がテニス部の縁の下の力持ち、小石川と師範。この2人は、他と違ってチョコをねだりに来るとかそんなことしないのである。
「何で小春と小石川と師範にはチョコがあって、俺らにはないんや!」
『だから、義理チョコをあげる義理も無いんだって。』
「財前に善哉、金ちゃんにたこ焼きをやったのにか!!」
『それは、義理とかとはまた違うし。それに、煎餅あげたじゃん。』
「それもいろいろちゃうやんか。…その前に煎餅も貰ってへん。」
『そんなにお腹空いてるなら、部室にたこ焼き残ってるから食べてもいいけど?』
「食う(食べる)!」
『どうぞ、どうぞ。』
部室にて。
「ホントにたこ焼きおいてあるばい。」
「でも…、甘い匂いしとるわね。」
「こ、これは!まさか!!」
「チョコや〜!!」
その日、誰が呼び止めても止まらずに、部室に向かうテニス部を多くの人が見たと言う。
そしてまた、部室で争うように、チョコ入りたこ焼きを食べるテニス部を多くの人が見たと言う。
それを見た彼らのファンが、チョコをあげることを諦めたのは言うまでもない。
バレンタイン・パニック in四天宝寺
(ワイが食べたのは普通のたこ焼きやったで?)
(それは…ね、大人の事情だよ、金ちゃん。)
(先輩…ツンデレっすか…?)