四天宝寺 短編 | ナノ

窓の外の景色。
移り変わって、季節まで私を置いていく。
彼と別れた季節が窓の外を流れていく。


(光)『すんません…。やっぱ、無理っすわ。』

誰より近くにいたつもりだったのに、不安の種にどうして気付かなかったんだろう…。


1つ年下で、今中3の光。私が中学の時から付き合い始めて、もうすぐ1年だった。
私は謙也と白石と同じ高校で、光も時々遊びに来てた。

1年の差は大きい、光はよくそう言った。私は、『そんなことないよ。』としか言えなかった。
自分の分からないところで生活していることが、きっと不安だったんだと思う。
…それは、私も同じだったのに。
年上だからと私は見栄をはって、光を不安にさせただけだったんだ。


あなたの姿が見えなくなる前に、たった一言“行かないで”と言うだけの事が私にはできなかった。

(光)『同い年の奴で、告って来たのがいるんすわ。…そいつと付き合います。』

あなたが幸せならそれでいいなんて絶対に言えない。
好きなんだから“好き”と言えばよかったのに。でも言えなかった。
こんなねじ曲がった心がどうしようもなく私は嫌い…。


『そういえば…、もうすぐ誕生日だ。』

目に入ったのは、去年の誕生日に貰った、私と光のイニシャルが入ったリング。
二人で撮った写真の中に置いてある思い出。まだ片付けられずにいるそれらを見る度に心が痛い。
おそろいだったはずの片割れを、彼はもう棄てちゃったかな…。

今さらだけど、本当に今さらだけど…。思った以上に私は光を必要としてたんだ。


突然切り出された別れにまた見栄をはった。

『そっか…。ごめんね。』

あなたと築いた時間さえ全て壊すように。思ってもいない言葉だけが口から出ていった。


あなたがいつか、後悔すればいい。私と別れたことを。そんな日が来ること望んでる。
でも、原因は私。光の不安に気付いてあげられなかったから。
…また、そうやって年上ぶる。そういうところがいけなかったのに。
こんな意地悪で醜い心が昨日よりももっと私は嫌い。


彼と別れた季節が過ぎていく。同じことだけを思いながら、何となく。

昨日、光を見た。
私と居たときより少し嬉しそうに、女の子と歩いていた。元々、表情が分かり難いけど、ほんの少しの表情の変化でも、一緒にいたからわかるつもり。

あなたが幸せならそれでいい。…何て、言えないけれど。
あなたが凄く後悔する。…そんな日が、来ること望んでるけれど。

それでも、1番嫌いなのは、意地悪でねじ曲がった醜い私の心。
光の姿を見て、昨日よりも大きくなったその思い。


変わり行くは彼の心と窓の外
(あの日私は、声を押し殺して泣いた)

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テーマ「人外ファンタジー」
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