10月4日。
今日は跡部景吾の誕生日です。
『けーご!!』
「何だ、名前。」
『誕生日おめでとう!!』
今日は、景吾の誕生日!!
とっておきのプレゼントを用意してきたの。でもそれはまだ内緒。お楽しみは最後でしょ?
『今日はどこに連れてってくれるの?』
「そうだな、今日は…、1日黙って俺様について来い。」
『分かった!!』
今日は俺様の誕生日だ。
こいつは俺の女。…馬鹿だが、強い女だ。今日は、こいつにとっておきの贈り物を用意した。…俺が貰う側なんじゃないかって?そんなちっせーこと気にしねぇよ。
「ここだ、来い。」
『え、ここ?』
着いた先は…景吾の家?
でも、景吾の家なら何回か行ったことあるし…。いつも通り景吾の部屋へ向かう道を辿ろうとしたら、景吾に呼び止められた。
「そっちじゃねぇ、こっちだ。」
『え、』
俺の部屋に向かおうとする名前を引き止め、逆側の廊下を歩き出す。
広い家だ、あいつはどこに行くのか検討も付かねぇんだろうな。不安そうに着いてくる。すぐに廊下は突き当たり、大きな扉を開いた。
「ここだ。」
『え、な、に…?ここ。』
景吾の開いた扉の向こうには、“ATOBE”と書かれた飛行機。
エンジンの音で隣にいる景吾の声さえ聞こえない。そんな私の手を引いて、景吾は私を飛行機の中へ連れていく。
「これからお前を俺様の別荘に連れていってやる。」
『え、別荘!?』
景吾が別荘を持ってるなんて話は初めて聞いたけど、景吾なら持ってても不思議じゃない。だって景吾だしね。
景吾の家から飛行機は飛び立って、街の上を、海の上を飛んでいく。
「着いたぞ。」
『うわ〜!!』
俺様の別荘にはプライベートビーチがある。船に乗って海を出ることも出来る。夕日が一番美しく見える場所にテラスも作らせた。
「名前、来い。」
『ん?何、景吾。』
「お前に最高の贈り物を用意してやったぜ!!」
『え、私に?』
「手を貸せ。」
景吾は私の左手を取った。
薬指にはめられてるのは…指輪!?
『え、景吾?』
「婚約指輪だ。一生俺様の女にしてやる。…無くすんじゃねぇぞ。」
『…景吾。』
「あ〜ん?」
名前は泣いていた。後ろからさす夕日がいつもより数倍美しく見えた。
これが俺様からの最高の贈り物だ。
『ありがとう、景吾。』
「当然だろ。」
『順番がおかしくなっちゃったけど、これは私から。誕生日のプレゼント…より、お返しみたいだけど。ちょっと頭下げて。』
「…こうか。」
頭を下げた景吾の首に手を回して、離した。
景吾の首から下がった、私からのプレゼント。
「指輪?」
『婚約指輪は男性が女性に贈るものでしょ?景吾の左手の薬指にはめるのは変かな、って思ったからネックレスにしたの。』
「…どっちにしろ、同じだろ。」
『だって私、景吾のお嫁さんになるのが、夢だったから。まさか、景吾が本当に指輪くれるなんて、夢にも思ってなかったもの。』
…まったく、こいつは。ことごとく俺様の予想に反して来やがる。
『それからね、これは父様と母様から。』
「…鍵か。」
『来年からね、父様と母様が海外に渡ることになったの。私だけ残ることになったんだけど…。一人じゃ不安だから景吾に渡せって。』
「ハッ。入らねぇな、こんなもん。」
『…え。』
「今、お前は永遠に俺の女になったんだ。一人暮らしなんかさせられるわけねぇだろ。」
“俺様の家に住めばいいんだよ。”
そういった景吾の顔が赤かったのは、夕日のせいか。でも、私の顔は景吾より赤いに決まってる。
だって、今日は景吾の誕生日のはずなのに、1番たくさん、1番欲しかったプレゼントを貰ったのは私だから。
誕生日は婚約記念日
(私のプレゼント、全部意味なくなっちゃった気がするんだけど…。)
(お前が永遠に俺様の隣にいることが、何より最高の贈り物じゃねぇか。)