氷帝学園 短編 | ナノ

初めてのキスは涙の味がした…。
まるでドラマ見たいな恋。見計らったように発車のベルが鳴った。



冷たい冬の風が頬を掠める。吐いた息で両手を擦った。街はイルミネーションが輝いてる。裸の街路樹も、魔法が掛かったみたいにキラキラしてる。

高校最後の冬。受験したのは今私が住んでるところから遠く離れた私立大学。受かっても素直に喜べないのは、離ればなれになるから。どうしても言えなかった一言があるから。

でも、その気持ちは押さえ付けた。ずっと前から決めていたことだから、これでいいの。振り向かないから。

(ありがとう、サヨナラ、――。)

切ない片想い。足を止めたら思い出してしまう。だから…。

(ありがとう、サヨナラ。)

泣いたりしないから。そう思った途端にふわり。

『雪…。』

舞い降りてくる雪。触れたら溶けて消えた。

「ほら見て!初雪!」

駅へと続く大通りには、寄り添い歩くたくさんのカップル。楽しそうに笑う、誰かみたいになりたかった…。

少し早いけど、もう学校はないから、大学の近くにアパートを借りて独り暮らしを始める。次にここに戻ってくるのは卒業式の日。もう、会うこともないの。

あんな風になりたくて、初めて作った手編みのマフラー。どうしたら渡せたんだろう…。怖かっただけの意気地なし。

『どうせ、思い出になるんだから…。』

それは、ホントなの?

(ありがとう…。サヨナラ…。)

いつかこんな日が来てしまうこと、分かってたはず。なのに…。

(ありがとう?サヨナラ?)

体が震えてるんだ。もうすぐ列車が来るのに。言えなかったあの一言が、今になって私を苦しめる。

繋がりたいって、どれほど願っただろう。でも、この手を握ってくれる人はもういないの。私の手の中には何もない。…ねぇ、サヨナラってこいうこと?

「名前ちゃん!!」

行かなくちゃ。そんなのわかってる。もう列車は来てるんだ。その声が誰の物かも分かってる。君が優しいことも知ってる。
だから…。

『……この手を放してよ。』

「嫌だよ!!」

やっぱり、出会えてよかったよ。…君が、好き。

『ありがとう、さよなら、』

あと一言が言えない。もう一言、言いたいことがあるのに…。今だけでいい、私に勇気を…!!

『あのね…、』

言いかけた唇。君との距離は0(ゼロ)。…今だけは泣いていいよね?
初めてのキスは、涙の味がした…。


初めての恋が終わる時
(来年の今頃には、きっと君を忘れた私と、)
(君を忘れた俺が、いるのかな。)

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