本当は、甘えられる恋がしたかった。
“気が強くて、姉貴肌で、いつも頼りにされていて、背が高くて、かっこいい”
周りの人から見た、私のイメージ。何年もこれを抱いたまま、私は強い女であるしかなかった。本当は誰かに甘えたかった。可愛い女の子になりたかった。…なんて、いまさら言っても変われない気がする。
「おはよー!!名前!!」
『おはよう、英二。』
「おはよう、周助くん!」
「おはよう、はるきちゃん。」
朝は、一緒に登校。
「名前!一緒にご飯食べよー!!」
『いいよ、どこで食べようか?』
「周助くん、一緒にご飯食べてもいいかな?」
「もちろん。いこうか。」
ご飯も一緒に食べて。
『英二、前向いて歩かないと転ぶよ。』
「へーき!へーき!」
「はるきちゃん?どうしたの?」
「え、あ、ボーっとしちゃって!!」
心配されてみたり。
「じゃーね!バイバイ、名前!!」
『気を付けて帰りなよー?』
「じゃあ、周助くん送ってくれてありがとう。」
「うん、また明日ね。」
家まで送ってもらったり。
本当は、いつも、いいなあと思う。クラスで仲の良い公認の二人。はるきちゃんはいつも不二に甘えていて、不二もそれが嬉しそう。
私たちも仲がいいって言われる。自分でもそうは思ってる。でも、どう考えたってこれじゃ逆だ。本当はあんな風に恋愛したかった。甘えてみたかった。保護者みたいなことがしたかったわけじゃない。
でも、今のままでもいいか、と思えるのは、きっと私が英二を好きだからなんだろうな。
欲しい物と満足する物の違い
(私は案外、幸せ者なのかもしれない。)