青春学園 短編 | ナノ

『あれが、シリウスでしょ〜?』

…何億光年向こうの星も、

『あ、ホコリついてるよ?』

…肩に着いた小さなホコリも、

『すぐに見つけてあげるよ!!』

この目は、少し自慢なんだ。
時には心の奥底も見えてしまうものだから、

(好きだよ。)

頬は熱くなって、

(早く別れればいいのに。)

たまに悲しくもなった。

周助はあたしに嘘は付かない。友達は周助と付き合い始めてからばっかり。
…全部全部、あたしの目には見えてるのに。

人の心は目に見えない、何て言うけど、あたしの目には人の本心が見える。
テニス部の人たちはみんなカッコいいっていうけど、一番人気なのは周助だと思う。その周助と付き合い始めてから、仲の良かった友達も、見たこともない後輩もみんな、あたしと周助が別れればいいのにって心の中で思ってるんだ。


そんなあたしの二つの光。最近、薄っすらボヤけてきたな…。

「ごめんね…。」

見えてたはずの、周助の心。今はもう、見えない…。
交差点に君が立っていても、もう今は見つけられないかもしれない。君の流れる優しい茶色い髪にも気付かないほど涙に霞んで…。さらに見えなくなる…、すべて。

(もう、疲れたんだ…。)

あたしは、何を落としてきたの?
…いつもその心を見ていたはずなのに。

思い出せない記憶のクリップ。
…挟んだ瞬間痛かった、言うまでもないこのハート。

何週間か前から、時々周助の心が嘘を吐き始めた。きっと、記憶したときにあたしの心が痛かったのは、気のせいじゃなかったんだね…。


「今はテニスに集中したいんだ。」

吐き出す声は、ため息交じり。…やっぱり、ボヤけてきたな。

君の横顔越しにあるもの、もう今は見つけられないかも知れない。あたしの髪が揺れる距離の息遣いや、きつく握り返してくれた手は…、さらに消えてなくなるのにね。

(もう、君には着いていけないよ…。)


空が暗くなってゆくことに気付く。今日も終わってしまう…。
周助があたしの目に映らなくなって、どれぐらい経ったのかな…。この世の終わりが来たように呟く、

『さよなら。』


交差点で君が立っていても、もう今は見つけられないかもしれない。
…いつの間にか、君の横顔に映ってたのは、心に想ってたのは、違う子だったから。
君の優しい流れる茶色い髪にも、気付けないほど涙で霞んで。
…あたしの髪が揺れる距離の息遣いも、きつく握り返してくれた手も、今は私の隣にはない。
さらに見えなくなる、すべて。
…ほら、消えてなくなった。

この唄を、この想いを、一体誰が聴いてくれるの?


目に見えるモノと見えないモノ
(全て見えてるつもりでも、見えてないモノなんて、たくさんあった。)

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