「霧野」
神童に声をかけられて歩みを止める。
「一緒に帰らないか」
「あぁ、良いよ」
神童と一緒に帰るなんていつぶりだろうか。
中学に上がるまではいつも一緒だったのに、中学に上がってからはなかなか機会がなかった。
「今日天馬がさ、」
神童の口からはあいつの名前ばかりが吐き出される。
神童が笑うのも、泣くのも、今はあいつに向けてだ。
お前の目には、あいつばかりが映っている。
隣にいるのは、
いたのは、
俺なのに。
「でさ、……霧野?」
ハッとして神童を見れば、心配そうに見つめていた。
「どうした?具合でも悪いのか?」
神童の冷たい手の平が俺の額に当てられる。
触れられたとこが、熱い。
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