「狩屋」
名前を呼ばれたと思ったら、唇を重ねられた。涙の味がした。
「好きだ、狩屋」
「なん、で……今言うんですか……っ」
「今だから、言うんだ」
「そんな、最後みたいなこと言わないでください!」
俺らしくない。
涙を流しながら霧野先輩の服を掴んで俯いた。
霧野先輩は優しく俺の頭を撫でる。
「消去完了した。お前たちは直にサッカーを忘れるだろう」
そういってアルファは消えた。
残された先輩と俺。
「霧野先輩……」
「狩屋」
この名前も、忘れてしまうのだろうか。
思い出も全て消えてしまうのだろうか。
「泣くな、狩屋」
「泣きますよ……っだって、全てなくなってしまうんですよ?なかったことになるんですよ?」
「うん……でも、きっとまた会えるから。きっとまたみんな会えるから。だから、泣くな」
泣くな。
最後の言葉は、それだった。
「おい」
声をかけられて振り返る。
ピンクの髪の……女の子?
「今お前俺が女だと思っただろ!」
「お、思ってませんよ!で、何ですか?」
危ない危ない。
なるべく他人に悪い印象を与えたくない。ここでは俺は"良い子"なんだから。
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