そんなときだった。


目の前に突然現れた、アルファとかいう少年。


サッカーがいけないもの?
なくすべき?


意味が分からないことを勝手に言って、意味が分からないまま俺達は逃げた。霧野先輩が俺の手を握って走り出したから、俺もそのまま走った。


「霧野先輩……っ」


「あいつ、やばい感じがする。とりあえず逃げるぞ狩屋」


「逃がしはしない」



あんなに走ったのに、目の前には奴がいた。

おかしい。

だってあいつに抜かされたなんて有り得ない。


「お前たちからサッカーを消去する」


「っ、霧野先輩!」


「……狩屋」


「逃げましょう、霧野先輩!」



逃げましょう、今すぐに!

けれど霧野先輩は動かない。

そんな、だってサッカーがなくなったら、俺達は……っ



そこで初めて気づいた。
俺が霧野先輩に惹かれていたこと。
ただの憧れだと思っていた、先輩に対する尊敬だと思っていた感情が、恋情であったということに。


こんなこと、今気づきたくなかった。

だって、サッカーがなくなってしまったら、もう霧野先輩とは会えないかもしれないのに。

俺達の繋がりは、サッカーだけなのに。


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