「夕香ちゃん」
佐久間さんが急に足を止めて私の名前を呼んだ。
少しだけ佐久間さんより進んだ位置で振り返る。
「有難う」
そう言った佐久間さんは、今まで見たどの佐久間さんよりも綺麗で。
強く優しく笑う佐久間さんに、またキュッと胸が苦しくなる。
「佐久間さん」
佐久間さんの名前を呼ぶと同時に佐久間さんに抱きついていた。
佐久間さんは「おわっ」と一瞬だけ驚いて、すぐにもとの優しい笑顔と声で「お疲れ様」と言って私の背中に腕を回して抱き締めてくれた。
きっと佐久間さんは気づいていた。私がお兄ちゃんと共に内部から革命を起こそうとして手伝っていたこと。きっと、お兄ちゃんが聖帝だと気づいたときから。
体を離して佐久間さんを見ると、照れているのか少しだけ赤くなっていた。
私もみるみる赤くなっていくのが分かる。
なんて大胆なことをしてしまったのだろう。
お互いに向き合ったまま、時間が過ぎる。
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