君がいる明日 - main
『貴方の命は後三日です』


「イギリス……」
「んだよ」
「──……俺、あと3日で死ぬんだ」
「っ!? なっ……おい! どういう事だ!?」
「今日……道を歩いてたら『あなたの命はあと三日です』って言われたんだ」
「は?」

 アメリカは頭を抱えて髪を掻き乱しているが、イギリスは逆に冷静さを取り戻して浮かせた腰を再びソファへ降ろした。

「あー…そいつは他に何か言ってなかったか?」
「ああ、そう言えば『この壺を買えば災厄から免れます』なんて言っていたけど、壺ごときで病気が治る筈ないじゃないか!」

(なんで壺は信じないで、占いは信じんだよ!)

イギリスの心の声が木霊する。

「…まあ大丈夫だろ、全ては3日経てば分かる事だ」
「イギリス!ふざけないでくれよ……! 俺は3日後にはもう居ないんだぞ!? 君を頼りに此処まで来たのに……もう良いよ!」
「っ! 分かった! 悪かったっ! アメリカ、何か欲しいモンとか行きたい場所とか、したい事とかあるか? 何でも付き合ってやるよ。だから……な?」

 イギリスは憤慨した様子で席を立つアメリカを何とか宥める。
 今や超大国となった元弟に頼られるのは悪い気はしない。

(つまりは3日間気を逸らしてりゃ良いんだろ? 死ぬ訳ねぇんだから)

「……欲しいもの……したい事……──」
「そうそう。何でも言えって、遠慮すんな。あ、ただし俺に出来る事に限るぞ」

 アメリカは暫く考え込む様子を見せた後、顔を上げて真っ直ぐにイギリスの緑眼を捉える。
「じゃあ……──俺は、……イギリスが欲しい」


  * * *


「っ…待て! 待てまて待てぇぇえ!」

 机を回って距離を詰めるアメリカに、イギリスは反応が遅れた。逃げなければと思う頃には既にアメリカに腕を捕らわれ、抵抗したら床に引き倒されて。
 アメリカがイギリスの衣服に手を掛けると、強く引いたつもりも無いのに簡単にボタンが弾け飛んで白い肌が露わになった。
 暴れるイギリスを片手で制して反対の手でズボンを鷲掴み、思い切り引っ張るとジッパーが壊れて下着ごと引き抜く事に成功する。
 あっと言う間に破れたシャツ一枚にされたイギリスは、羞恥に頬を上気させて自身の下肢を手で隠す。
 そんなイギリスを意に介す様子もなく、アメリカはイギリスの片足を持ち上げて無理矢理に足の間へ身体を捻じ込んだ。
 あらぬ所へ押し当てられる熱にイギリスは焦る。
 アメリカの胸板を叩いたり押し返したりしながら、必死に叫んだ。

「待て! やめろ! おいアメリカ! どけ──」

 徐々に苛立ちの滲む声が不意に止んで。
 破れたシャツから覗く素肌に生暖かい雫が落ちる。涙だ。

「ア、アメリカ……泣いてるのか?」

 驚きに見開かれた翠と濡れた蒼が交わる。
 息を呑んだイギリスは、抵抗する事を忘れていた──。




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