擦れ違いシリアス
※読後感のあまり宜しくない小話
「そうだね」
目を閉じる。
俺だって、何を言われても傷付かない訳じゃない。
「……終わりにしよう」
諦めよう。
それがお互いの為、ひいてはイギリスの為なのだ。
自分に言い聞かせる。
ずっとずっと諦め切れずに此処まで来たけど──もう、終わりにしよう。
「さよなら……イギリス」
俺は後ろを振り返らずに歩き出す。
君だって、もう俺の事なんか見ていないだろ?
そうだと言ってくれよ。
泣いてなんか居たら、許さないんだぞ。
……嘘だ。
諦め切れる筈が無い。
そんな筈が無いじゃないか。
震える拳を握り締めて。漸く振り返る頃にはもう、既に彼は居なくなった後だった。
俺は……なんで、この時すぐに振り返らなかったんだろう。
俺はヒーローなのに。
ずっとずっと彼だけのヒーローになりたかったのに。
辛くても苦しくても抱き締めて、離さずにいれば良かったのに──。
俺は馬鹿だ……。
けど、もっと大馬鹿なのは────。
◇◇◇
これで良い、これで良い。これで良かったんだ。
あと何十回、何百回唱えれば眠れる夜が訪れるだろうか。
嗚呼……違う。まだ一つ、最後の仕上げが残っていた。
……あめりか、あめりか。あいしてる、あいしてた。
信じられなくて遠ざける度に、余計に素直になれなくなっていった。
そうしてあいつの傷付く顔を見る度に、矢張り俺では駄目なんだと思い知る。
要らないものは全て棄ててしまわなくては。
あめりか、あめりか…お前のしあわせだけを願ってる。
あの時は返せなかった言葉を今返そう。
「──さよなら……アメリカ」
戻る