君がいる明日 - main
貧乏学生×社会人


■米視点
■米がなんか英語弱い子
■米のツンが失踪中
■相変わらず強調される英の眉毛

始まりの場面:スーパーマーケット






「う〜ん……」

 俺は今、非常に悩んでいた。

 今月は新作のゲームを三つも買っちゃって、財布の中がスーパーピンチなんだ!
 ただのピンチじゃないぞ。スーパーでビックでグレイトなピンチさ!

 兎に角今そんな俺の前に並ぶのは、タイムセールで半額になった多種多様な弁当や惣菜たち。
 中でも俺の目を引くのは、超お得サイズとシールが貼られたパーティー仕様のオードブル。
 チキンもポテトも沢山入ってて、腹ペコな俺は見てるだけで涎が出そうだった。

 でも……。

「…………」

 俺は財布を開けて中を見て、そして直ぐに仕舞った。

 足りな……くはない、ないけど……。それに幾らなんでも一人でこの量は……。いやでも……。

 暫く周りをウロウロして、色んな弁当や惣菜を見て回って、でもやっぱり忘れられなくて俺は再びあのオードブルの前に戻って来た。

「……う〜ん……」
「う〜ん……」

「「っ……!?」」

 オードブルしか目に入ってなかった俺は、隣に人が来ていた事に気が付かなくて。

 同じタイミングで唸った見知らぬ誰かに驚いて顔を上げたら、眉毛と目が合った。
 否、それじゃ可笑しいか。眉毛っぽい人……じゃなくて、人っぽい眉毛?いやいやいや。

 何て言うのかな、上手く説明出来ないけど眉毛が眉毛を着て歩いてるような眉毛で眉毛の……兎に角俺は、彼の眉毛から目を離せないまま、人に取られるとなったら無性にどうしても食べたくなったオードブルを慌てて手に取った。

 それにしてもこの人、どうしてこんなに眉毛がアレなんだろう……。

「…………おい、」
「えっ!?あ、な、なんだい!?」
「……何処見てんだよ」

 ……訂正。

 片手を目の上に翳して……つまり眉毛を隠して少し恥ずかしそうに唇を尖らせた彼は、眉毛な部分を差し引いてもとっても可愛い人だった。

 急に頬が熱くなってきて、心臓がドキドキと騒ぎ出す。

「あ、これ……ドウゾ……」

 気付いたら俺は手にしていたオードブルを差し出していて。
 けれど喜ぶかと思った眉毛の人は、少し驚いたように俺を見た後に首を横に振った。

「いや……いい。どうせ一人だしな、迷ってた所だから丁度良い」

「……一人? 君が? これを?」

 痩せっぽちで少し目線が俺より低い彼をまじまじと見下ろせば、ぎゅっと眉間に寄る彼の眉毛。

「んだよ、文句あっか。……誕生日くらい何喰ったっていいだろ」

 言いながら、彼は話はもう終わりとでも云うように俺から目を逸らしてオードブルの傍にあった海苔弁当を手に取った。

 俺は慌ててその手を制する。

「誕生日なら尚更だよ! 海苔は君の眉毛だけでもう充分じゃないか!」

「テメェ今なんつった!」

「だから……誕生日なんだろう? はい、これ!」

 俺は眉毛な彼の手から海苔弁当を奪って元の場所に戻し、空になったその手にオードブルを押し付けた。

「だから俺は一人だからいいっつって……」

 ああ、もう、俺ってこんなに積極的だったっけ。

「じゃあさ、俺が祝ってあげるから一緒に食べようよ! 反対意見は認めないんだぞ!」





「…………で、本当に来るか?普通……」

胡散臭そうに俺を振り返る眉毛の彼……アーサーの家は、スーパーと俺の家の丁度真ん中らへんだった。

「良いじゃないか! 折角の誕生日なんだ、一人より二人の方がいいだろ?」

「まあ、それはそうだけどよ……」

 言いながら渋々と食事の支度をする彼の背中を見ながら、俺の頬はさっきから緩みっぱなしだ。
 何だかんだで彼は結構俺に絆されてくれてるみたいで。
 よく皆に「アルは話し易いね」って言われる自分の性格に、俺は今神様にも感謝したい気分だった。

「……で、君は何をしてるんだい? 俺はお腹ペコペコなんだぞ! 早く食べようよ!」

「まあ待てって。こういうスーパーの出来合いの惣菜はだな、ただ温めて喰うよりも一手間加えた方が美味いんだ」

「へえ! アーサーは凄いね! きっと良いお嫁さんになれるんだぞ!」

「ま、まあな! って何言ってんだ馬鹿それ可笑しいだろ!」





「……」
「………」

「ねえ……」
「………なんだ」

「……さっきの台詞、訂正しても良いかい?」

「……良いけど、追い出される覚悟もしとけよ」

「……」
「………」

 俺とアーサーは、すっかり炭化してしまったオードブルという名の炭を二人で突付いていた。

 嗚呼……、俺のチキン……俺のポテトが……。

 何となく気まずい食卓に、プルルル、と味気ない携帯電話の着信メロディが響き渡る。
 アーサーが、「ちょっと出て来る」と言って席を立った。

「……」

 誰も居なくなった部屋の中で、俺は自分の鞄からさっきのスーパーの袋をこそこそと取り出す。
 中には、オードブルの会計をアーサーに任せている間にこっそり買った小さなケーキ。
 其れは寧ろ生クリームとスポンジのサンドイッチと呼んだ方が正しいかも知れないけど、炭よりは美味しいに決まってる。

 何と言っても、オードブルやジュースをアーサーと割り勘で買った残りの全財産がこのケーキなんだ。
 俺はアーサーの席の前に其れを置いて、帰って来た彼がどんな顔をするか想像しながら頬を緩めた。




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↓後書き&妄想話

オードブルを一人で買って食べたのは他でもない私なのですが其れはさて置き。

・英の電話相手がもし仏だとしたら。

一人寂しい誕生日を送ってるんだろうとによによ声で「ご飯作りに行こうか?」と言った仏に一瞬ツンを発揮しそうになったものの、炭オードブルを前に残念そうにしていたアルフレッドの顔がよぎって招待。
顔を合わせた米仏がお互いの存在に驚きつつも順調にパーティー、そして酒盛りへ…

気付けば仏は何時の間にか帰っていて、朝に米英が二人裸でベッドで目を覚ます展開ですたぶん。
夜の記憶は残ってても残って無くても可!






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