君がいる明日 - main
2日目


次の日。
昨日の事は早く忘れようと思えば思う程、アーサーの泣き顔と一瞬だけ触れ合った唇の柔らかさが頭から離れなくて、俺は全然授業に集中出来なかった。
気が乗らないから部活もサボって屋上で昼寝して。目が覚めたらオレンジ色に染まっていた空に溜息を吐いて俺は校舎を後にした。

校舎を出て校門が見えて来た所で、ついでに見覚えのある二人組まで視界に入ってしまい、俺の眉間は知らず歪む。
一人は生徒会副会長のフランシス・ボヌフォワ。
もう一人は、今俺の中で最も関わりたくない人物NO.1の座に輝くアーサー・カークランドその人だ。
広い学園内、学年も違うし昨日みたいに呼び出されでもしなければ、そうそう会う筈のない人物の顔を二日続けて見る事になるなんて。神様は一体俺に何をさせようって云うんだ。

気付かない振りで脇を通り過ぎようとしたら、相手も俺に気付かないようでずっと二人じゃれ合っていた。
フランシスがアーサーの肩を抱こうとしたり髪を撫でようとする手を、アーサーが片っ端から叩き落としている。本当に嫌ならさっさと置いて帰ってしまえば良いのに。
俺はなんだかムカムカして来て、擦れ違い様に元々歪んでいた表情を更に不快に歪ませてこう吐き捨てた。

「……君、男なら誰でも良いのかい?」

すると、たった今気付いたとでも云うようにハッと顔を上げたアーサーが漸く俺を見る。
俺を見て元々怒りでか赤らんでいた頬を一層朱に染めたアーサーは、次の瞬間面白いくらいに青ざめた。

「なっ……ち、ちげぇ!」

「まさか、その人にもキスしたとか云うんじゃないだろうね」

「っ!!し、してねーよ!誰がするか!お、俺は……お前が…っ!お前だから……っ」

俺の言葉を受け、焦った様子で俺とフランシスとを見交わしたアーサーだが、ニヨニヨと笑うフランシスを無視して俺に向き直ると、今度は耳まで赤くしながら何か云っている。
俺は何故だか突然胸が騒いで、それ以上聴いてはいけないような気持ちに襲われて。

「……っ、遊んでないで早く帰りなよね。君は生徒会長なんだからさ」

彼の言葉など聴く耳持たない態度で逃げるように横をすり抜けた。
擦れ違い際、顔も見ずに吐き捨てると俺は足早に帰途へ就く。


その夜、アーサーの部屋の明かりが灯る事は無かった。

 



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