12/22 09:30


「え? ロヴィーノ君もですか?」

「悪いな菊……」

「ロヴィーノー、良い子にしてるんやでー?」

 アーサーにメールで呼び出しを受けて部屋の外へ出ると、申し訳無さそうに、しかし譲る意思は見受けられないアーサーと、そもそも悪いとは思っていないだろうアントーニョの姿があった。
 視線を下げると、アントーニョの足元にいた小さなロヴィーノ少年がアントーニョに背中を押されて菊の前までやって来る。

「よし! ほな行くでアーサー! 俺らで最高のクリスマスにするんや!!」

「ったりめーだろ! 俺の脚を引っ張んじゃねえぞ!!」

 普段は仲の悪い二人が肩を組んで去って行くのを呆然と見送ってから、菊は少し屈んでロヴィーノに視線を合わせると小さな手を取った。

「……では、私と一緒に参りましょうか」

 頬を空気で膨らませてひたすらに床を睨むロヴィーノの首が、ほんの少しだが小さく縦に振られるのを見て、菊はとぼとぼと進む歩幅に合わせて先導する。

(まったく……お二人とも、これでは本末転倒ですよ)



* * * * * * * * * * * * * * *



12/22 20:40


「バッカ! 俺がサンタに決まってるだろうが!」

「いーや! サンタは譲れへん! サンタは子供の夢なんや!」

「だから俺がやるっつってんじゃねえか! …チッ、埒が明かねぇ……」

「ほんまや。……ほな、勝負といこか」

「良いぜ、望むところだ……。先に気ぃ失った方がトナカイだかんな……」

「ええで。気ィ失ったお前にトナカイの着ぐるみ着せんのが今から楽しみや……」

「うぉぉぉぉお!!」
「でりゃぁぁあ!!」



───プルルル… プルル……


「――お二人とも、お出になりませんね……。せめて声だけでもと思ったのですが」

 菊は一向に繋がらない携帯電話を閉じて、その様子をじっと見守っていた幼子を振り返る。
 途端に落胆の表情を浮かべる二人に、菊は慌てた。

「あ、そ……そうです。お二人とも、サンタさんにお手紙を書いてみませんか?サンタさんは、年に一度……クリスマスの日に良い子の所へプレゼントを届けに来てくれるんですよ」


クリスマス当日まで、後3日。



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