アイスか俺か大奮闘!
「アール、こら、ちょっと待てって……今開け……ひぎゃ! っ〜〜〜!」
風呂上がりのベッドの上。
俺の手には、バニラ味のカップアイスがあった。ついさっきまで。
早く早くと急かす俺より大きなアルフレッドがじゃれ付いて来るものだから、俺はカップを取り落としてしまったのだ。
蓋を開けた刹那、あぐらを掻いていた自分の足の間、なんと言うか両脚の付け根の更に真ん中辺りに、落とした。
アイスを強請るアルフレッドに、蓋を開けてから渡してやろうとしていた其れを。
しかもカップを奪い取ろうとするアルフレッドと暫く攻防を繰り広げていた所為で、若干溶けている。
何故俺が開けてやろうとしていたかと言うと、アルフレッドは力が強くて偶にカップごと握り潰してしまうからに他ならない。
握り締められたカップから飛び散ったアイスを片付けるのも風呂に入り直すのも手間なのだが、結局は似たような状況を招いてしまった訳だ。
「つめってぇぇぇ……ったく、だから待てって言っただろ?」
俺の大事なナニがダメージを受けてしまったが、敷布の上に落ちなかったのは不幸中の幸いか。
「今日のアイスはこれで終わりだぞ?」
「!?」
決して意地悪で言っているのではない。
俺がアルフレッドにそんな事をする筈がない。
実際問題、アイスのストックはこれが最後だったし、布越しとはいえ自分の股関に落ちたアイスをアルフレッドに食べさせる訳にはいかないだろう。
俺はアルフレッドが目の端に涙を浮かべていやいやと首を振るのを見ない振りして、落ちたアイスをカップへ戻し、蓋を閉めてゴミ箱へ放った。
「……!!」
「ごめんなアル、また明日買って……アル?」
声にならない悲鳴を上げていたアルフレッドが、ゴミ箱から視線を戻した俺の間近まで迫っていて。
罪悪感に支配されていた俺の胸が、驚きと戸惑いに変わる。
怒っているのだろうか、それとも慰めて欲しいのだろうか。
――なんて悠長な事を考えていられたのは、ほんの一瞬だった。
「……ア、アル……!」
俺の悲鳴はただ室内に虚しく響いただけ。
恐ろしい事に、なんとアルフレッドは躊躇う素振りも無く俺の股の間に顔を埋めようとしていた。
何故……?なんて、そんな馬鹿な質問はしない。
最早展開は読めている。
お前はそんなにアイスが好きか、アルフレッド!
慌てて膝を閉じようとあぐらを解いた脚が、太腿の内側を掴まれて思い切り割り開かれた。
「ぎゃぁぁあ! アル! アルッ! 止め……っ! ンんっ……!」
溶けたアイスが薄地のパジャマと下着をも微かに濡らしていた其処を、アルフレッドが大きな口を開けて含む。
もごもごと咀嚼したかと思えば抜き出して、柔らかい熱が布越しにペロペロと俺を撫で回した。
落ち着け、アーサー・カークランド。クールになれ。
こんなピンチの時こそ、この優秀な頭脳を使う時だ。俺は必死にアルフレッドの頭を押し返しながら考えた。
「ンンンんぅ……ンン……!」
時折音を立てて啜り、付着した僅かな残滓を拭い取ろうと強く押し当てられた舌が這う。
躯が俺の意思に反して勝手に快楽を追い始め、全身から力が抜けた。
足を大きく開脚させた変な体勢でいる事も相俟って、俺は背中からパタリとシーツへ倒れる。
(……あ……今、詰んだな……)
この後の展開を予測して見せようか。
先ずはその壱、俺が力の限り抵抗する。
その結果待っているものは、残念ながら俺の敗北以外は有り得ない。
何故ならそもそも力では敵わないし、アルフレッドを暴力に訴えて泣かせるくらいなら、俺は自ら敗北する道を選ぶからだ。
展開その弐。
興味を引ける別の物で釣る。
アルフレッドが興味を示す物は、アイス、そして俺だ。
結果は察して貰おうか。
最後はその参、アルフレッドに絶大な効果を発揮する魔法の呪文を使用する。
その名も『キライになるぞ』
しかしこれを一回使う事により、アルフレッドが一ヶ月は俺から離れなくなってしまう、まさしく両刃の剣だ。
更に言うなら、一回使う毎に俺の寿命が極端に減る。
「………」
俺は諦めた。
さっさと下肢から力を抜いて投げ出し、両手で口を抑え声を殺す事にだけ専念する。
バニラアイスの風味が無くなるまでの辛抱だ。
終わったら、トイレに駆け込めば良い。
アルフレッドはアイスが食べたいだけ、アイスを求めているだけなんだ。
心を無に……心を無に――――。
「ンっ、ふッ……ぁあ……」
――って無理だろ常識的に考えて。
下肢をがっちりとホールドされている所為で、与えられる刺激の余韻を逃がす前に新たな快楽が襲って来る。
躯が勝手にせめてもの妥協を求めるように、腰から上がシーツの上で淫らにうねった。
パサパサと振り乱す髪が敷布に当たって乾いた音が鼓膜に届く。
それでも、そんな音より遥かに勝る下肢から響く淫猥な蜜音に、脳髄まで支配されてしまいそうで。
不覚にも今の状況を上から見下ろした光景を想像してしまい、俺は……俺は……――。
「……ア…ル…、……っ」
状況に耐えかねて踵でトントンと背を叩けば、アルフレッドは漸く顔を上げてくれた。
手を伸ばして、アルフレッドの唇に触れる。
はふはふと荒ぐ呼吸を整えようと、口の中に溜まった唾液を飲み下して。
「……アル…、他のどこを舐めてもいいから……頼む……、其処だけはもう勘弁してくれ……」
アイス味のズボンが美味いくらいなら、俺の方が――。
アルフレッドの興味を引けるもの。
アイス、そして俺。
頼む俺、アイスに勝ってくれ……。
アルフレッドは、満面の笑みを浮かべた。
この後に起きた出来事を、俺は生涯忘れはしないだろう。
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『英を舐める米』