※子供っぽく甘えるイギリス ※大人で甘やかすアメリカ というリクエストにより(当サイト比)イギリスさんがふにゃふにゃ仕様です。
部屋を出る時は確かに寝ていた筈だけど、どうやら起きてしまったらしい。 まあ、それを予想していない訳でもなかったけれど。
「んんー……めり、かぁ…」 ぽす、ぽす、と。シーツを叩く手が俺の事を探してる。 やれやれ困った人だなんて浮かぶ言葉とは裏腹に、ひどく優しい気持ちになるのは何故だろう。 まだ深い夜の色に包まれた暁の境目、トイレに行く為にほんの僅か布団を抜け出していただけの俺は、ブランケットが半分捲られたままのベッドに近付いた。 腰を降ろせばギシリと軋むスプリング音と振動に、イギリスの瞼が震える。 もう少しだけ、君を見ていたい。 「んー……」 子供がぐずるような声と仕草に誘われて腕を伸ばせば、直ぐさま彼の両手に柔らかく捕らわれて。かと思えば強く引き寄せられてた俺の手は、手の平に頬摺りの歓迎を受けた。 猫が頭を擦り寄せてるみたいだと思う反面、胸一杯に彼の名前と愛しい気持ちが溢れる。 イギリス、イギリス。 「寂しかったのかい?」 緩む頬と優しい気持ちをそのまま体現したような声が出た。 「ん……」 まるで俺の問いに応えるみたいに小さく揺れた首。薄く開かれた唇から漏れる吐息が同意の相槌だって、きっと今だけはそう受け取ったって罰は当たらない。 そのままとろとろと眠りに落ちてしまいそうな気配に、俺はもう少しだけこうしていたくて声を掛けた。 「イギリス」 さっきよりもはっきりと音を乗せた声で。 少しずつ動きが緩慢になるイギリスに代わって、俺の方からゆっくり頬を撫でながら。 「愛してるよ」 ふにゃ、と喜色を浮かべて崩れる相好。それは、見せてくれるだろうと予想していたものと違わなかったけど。 肩が震えそうになる衝動をどうにか堪えて、隣に潜り込んだ。 今度こそ起こさないように、そうっと。 彼に握り締められたままの手が少し動く度に、切なく寄せられる眉間と一層抱え込まれる俺の左手。 大丈夫、ちゃんと此処にいるぞ。 言葉の代わりに右腕を廻した。 ブランケットを肩まで引いて、ずっと布団の中にいて温かい身体を抱き寄せる。 普段ならこんな事は許してくれないイギリスは、嘘みたいにすんなりと俺の胸元に鼻先を擦り寄せて来た。 「起きてる時もこうだといいのにね」 君も、俺も。 小さく漏らした声に返事は返らなくて、すよすよと安らかな寝息が聞こえて来た。 「おやすみ、イギリス。いい夢を」 皺の寄っている事が多い眉間は和らいで、俺の胸元で特徴的な太い眉を緩やかに下げている。 指先でさらりと前髪を掻き分けて露出させた額に唇を落とし、子供のような寝顔を網膜に残したまま目を閉じる。
「っうっわ!!」 眠りから引きずり戻されたのは、突如耳元で上げられた間の抜けた大声と、胸を思い切り押される乱暴な力だった。 「なんだい、イギリス……もう少し寝かせてくれよ」 「おっ、おまえ! 寝てる間にひとのこと抱き締めるの、いい加減やめろよな!」 朝起きてビックリするんだよ! 寝起きで元気だなといっそ感心する声量に、勢いよくベッドの端まで移動して背を向けたイギリス。毛布まで持って行くものだから、ただでさえ押しやられた俺の上から布がなくなってしまった。 キングサイズのベッドの上の端と端。とても寝起きの恋人同士の距離感とは思えない。 毛布をくいっと引っ張れば、その倍は引っ張り返されて。 「もう、寒いよイギリス」 「ばっ、ばか!」 ならばと起き上がって背中にのし掛かると途端に暴れる恋人は、同じ寝起きでもさっきとは大違いだ。 「ばか!てめえ!この!メタボ!離せ!」 耳まで真っ赤になっているのに気付かなかったら、流石の俺も昨日の出来事は夢か幻かと勘違いしそうになる。 俺は彼から手を離して、勢いよくベッドから降りた。 「やっぱり起きよう。ほら、君もだぞ!」 俺から解放されて、寝起きと暴れた所為で乱れた髪を手櫛で整えていた彼が眉間に皺を刻んだ不可解な顔で俺を見る。 「ああ?」 「早く起きた方が、夜もぐっすり眠れるからね」 片目を伏せたウインクを送って、尚もベッドの上でぼやぼやしたままの彼の腕を引っ張る。 「ほら、早く早く!」 「わっ、あぶねえだろバカ!」 バランスを崩した彼を身体全部で受け止めて、ハグをしたらまた暴れられた。 ねえ、どっちがホントの君なんだい?なんてきっと馬鹿な質問だ。 朝も昼も君が甘えられるような、そんな大人になるのが今の俺の目標だったんだって、いつか君に教えてやろう。
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キリ番(旧サイトカウント)リクエストから冒頭の内容米英でした! 前回に引き続きベッドでいちゃつく米英が好きすぎてすみません。
普段とは違う雰囲気なんじゃないかとupする前に友人に読んで貰ったら草(w)が返って来ていたく不安ではありますがGOサインも貰えたので更新…!
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