★ストロベリー オン ザ ショートケーキ







デコラティブでほんのり甘い滑らかなクリーム。
しっとりと舌触りの良いふわふわのスポンジ。
そして、その上に堂々と鎮座するみずみずしい真っ赤な苺。


そう、ショートケーキの苺を食べるタイミングと言うものは、何年も前からされてきた議題であるが、きっと答えなんてないのだろう。






ーーーーーー






「……。」
「どうしたのだ、巻ちゃん?」
「ショートケーキ好きじゃなかった?」



巻ちゃんの家に行く時はいつもお土産を持っていく。
ケーキだったりクッキーだったりものは様々。今回はショートケーキ。なかなか評判も良くて、食べてみれば確かに美味しい。
でも巻ちゃんの手は止まっていて、ジッとわたし達を見ていた。



「やっぱ兄妹で一緒なんだなァ…。」
「ん??どういうこと?」
「…あぁ!苺の事か!」



そう言われて机の上を見渡せばケーキの乗ったお皿が3つ。
半分ほど食べられたそれのうち、2皿の苺はすでに食されており、残りの1皿の苺は丁寧に皿の端に除けられていた。



「好きなものは最初に食べるに限るぞ巻ちゃん!」
「最後っショ。」
「何故だ!他を食べてる間に無くなってしまうかもしれないではないか。」
「いや、そんなことねーっショ。楽しみは最後に取っとくもんだろ。」
「ならんよ巻ちゃん!」







ーーーーーー







そんなやり取りをしつつ、気づけばそろそろ帰りの時間が迫っていた。


尽八がトイレに行くため席を立ち、必然的に2人きりになる。



「でも、意外だったなー。」
「何が?」
「ケーキの話。楽しみは最後にーとか、あんまり気にしないタイプだと思ってた。」



そうか?と言う隣の彼に、そうだよと言いながらもたれ掛かる。
ぽんぽんと頭を撫でる手が心地よくて思わず笑えば、彼はわたしの顔を見て少し考えるような仕草をした後、ニヤリとイタズラな笑みを浮かべた。



「どうしたの?」
「そう言えば楽しみがまだ取ってあったショ。」
「食べ物?」
「まぁ、食べれるっちゃ食べれるな。」



ふやふやと曖昧な答えによく分からないでいるわたしを余所に、そのまま頭を引き寄せられチュっと可愛らしい効果音付きでおでこにキス。
日常生活で経験するよりずっと近い位置にあるしたり顔の彼を見て、ようやく事態を把握した。



「…もー、いきなり過ぎ!」
「クハッ!苺みたいだなァ。」
「巻ちゃんのせいでしょ!」
「言ったっショ。楽しみが取ってあるってな。」











最後の最後で本日最大の楽しみを貰ってしまい、最後まで楽しみを取っておくのも良いのかもしれない。
そう考え直したある日の出来事。
















(2人だけずるいぞ!)(じ、尽八…!いつから?!)(デコチューしたあたりからだ)(ほぼ最初からじゃねーか、空気読めっショ)













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