★お名前エレヴァート






たかが名前、されど名前…。
特別な貴方の名前を特別に呼びたいと思うのはいけない事?




「巻ちゃん。」
「何ショ。」



ふわっふわの絨毯。座った彼に寄りかかり、うわごとのように名前を呼ぶ。



「マッキー。」
「何か違うもんに聞こえるっショ。」
「裕ちゃん。」
「野球選手かオレは。」
「ゆっきー。」
「っだぁー!何なんだヨ!!」



ごちん!痺れを切らした彼が立ち上がったため、支えをなくしたわたしの体はそのまま背中から倒れこむ。
絨毯がふわふわだろうとなんだろうと床は床だ。痛い。



「巻ちゃんひどい…」
「いきなり変な事言い出すからショ。」



そのまま蹲っていると、何だかんだ言いつつも打った頭を撫でてくれる。
やっぱり優しい。



「どうしたショ?」
「んー?巻ちゃん。」
「ショ?」
「って呼んでるじゃない?なんか、尽八と同じ、だなぁーって。」







――――――――







蹲ったままポツリポツリと話し出すありす。
先ほど打った頭や背中をそのまま撫でてやると、ごろりうつ伏せから仰向けになった彼女がこちらを見る。

さすが双子、東堂と同じ顔立ち。最初は勘違いから随分な騒動になったものだ。
けれど不思議だ、今では全く違う顔だということが分かる。



「これって、尽八しか呼ばなかったでしょ?だから、さ、」



ずるいなって思ったの。そう言いながらまたごろりと背を向けてしまった。



「わたしだって、何か特別な呼び方で呼びたいんですー。」



少し拗ねたような声でそう小さく言ったが、恥ずかしいのか耳まで真っ赤になっているのが分かる。

ヤバイ、何なんだこの可愛い生き物は。



「ありす、こっち向け。」
「や、やだ。」
「東堂に嫉妬してんだろ。」
「な、ち、違うもん!」



背を向けて蹲る彼女の肩を引き、そのまま仰向けにする。
覆いかぶさるようにして手をつき逃げられないようにすると、羞恥心からか少し潤んだ瞳と目が合った。



「おまえ、可愛過ぎっショ。」
「ずるい、よ…!いつもそんな事言わないのに!」
「東堂に嫉妬したんだろ?」
「……」
「したんだろ?」
「うー…そうですそうですー!どうせわたしはお兄ちゃんに嫉妬しましたよーだ!」



羞恥心がピークとなったのか、ジタバタと暴れる彼女を抑えつけ、ゆっくりと口付ける。
お互いのぬくもりを確かめるような触れ合うだけのキス。

何度か繰り返すと少し落ち着いたらしく、大人しくなったころを見計らい少し顔を離す。



「名前で呼べよ。」
「え?」
「裕介って、呼べばいいっショ。」


鼻先が触れるギリギリのところで視線を絡ませながら言う。


「いや、あの…名前は恥ずかしいっていうか…その、」
「ありす。」
「うー…」
「ありす。オレが、そう呼んで欲しいんだ。」



ただでさえ大きな瞳を零れ落ちそうなほど見開き、金魚のように口をパクパクさせている姿が可笑しくて笑いを堪えられないでいると、また拗ねたように口を尖らせる。



「やっぱりずるいよ……裕介は!!」
「クハッ!よくできました、ショ!!」



ぎゅっと彼女を抱きしめるとそのまま自分も絨毯に転がる。











暖かな光が差し込む部屋。ふわふわの絨毯。
可愛い彼女とこうしてごろごろするのもいいものだ。



気づけばは腕の中から聞こえるスースーという寝息。
気持ち良さそうな寝顔に欠伸をひとつすると、オレもそのまま瞳を閉じた。






















(ん、…ゆうす、けぇ…)(これ、結構クる、ショ)








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