微熱な指先




「今日の部活ミーティングだけだからヨ、一緒に帰らねェ?」
「…!!うんっ!」


恋人同士とはいえ、引退した今でもよく部活に顔を出している彼と一緒に帰ることは滅多に無かったりする。
少しぶっきらぼうな彼からの珍しいお誘いに、わたしはすぐさまYesの返事を出した。





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「うぅ…さむいー!!」


すぐ済むからちょっと待っとけと言う彼の言葉に、じゃあ校門で待ってると答えたわたしは、木枯らしの吹く中、ひとりぽつんと待っていた。



「(まだかなー靖友くん…。こんな日にかぎって手袋忘れるし…!)」



校門で待ち始めて30分。部活に所属していない生徒たちが下校する波も過ぎ、気持ち的にも寒さ的にもだいぶ辛くなってきた。
やっぱり中で待ってようか、いやもうすぐ来るかもしれないし…という葛藤をしながら、わたしはジンジンと悴む手に何度目かの息を吹きかけた。








やっぱり中で待とう。そう思って動きだそうとしたそのとき向こうからやってくる人影がみえた。



「わりィ、遅くなった。」
「うぅ〜遅いよー。手ぇ死んじゃう!」



少しバツが悪そうにやって来た彼にほらっ!っと、悴んだ手を出して見せる。



「あ?手袋してねェの?」
「今日はたまたま忘れちゃったの!朝急いでたから。あ、そうだ靖友くんあっためてよー。」



ふざけながらずいっと彼の方に手を持っていき、首元を触ろうとする。が、運動部の彼と帰宅部のわたしでは当然反射神経も違うわけで、するりと避けられてしまう。



「ちぇー…」
「おめー今首触ろうとしたろ。」
「えへ☆あったかそうだったからさ。」
「えへ☆じゃあねーよ!」





冷たいを通り越して痛みまで持ち始めた手を少しでも温めようと擦る。
すると隣から呆れを含んだ溜め息が聞こえた。やばい、少しふざけすぎたかも…。



「ごめんちょっとふざけ…」
「ったく、しょうがねーな!オラ、手ェ貸せ。」
「う、うん?」



まさかの申し出に、私はおずおずと手を差し出す。彼は手袋を外した大きな手で、その一回り以上小さなわたしの手を包んだ。すっぽり包まれている自分の手を見て、改めて恋人になったんだなぁと実感する。



「(うわぁ、あったかい…ってか、なんかこれ恥ずかしい、かも…!!)」





あったかいな、恥ずかしいな、手大きいななど少し混乱した思考でぐるぐる1人パニックを起こしていると、ふいに手が心地よい暖かな風に包まれた。



「ぅあ、や、靖友くん!?」
「あ?んだよ、ありすがあっためろっつったんだろーが。」
「そ、そうだけどっ…!い、いま、ふふ、ふぅーっ、て!!」



暖かな風の正体は彼の吐息だった。わたしの手を包んだ手を口元まで持っていき、はぁっと息を吹きかけたのだ。



「顔真っ赤だぞ。」
「だ、だって靖友くんが…!」
「別に普通だろ。ってかこんなんで恥ずかしがってて大丈夫かァ?ありすチャン。」
「ふふふ普通じゃないよー!!」



さらにパニックを起こして騒ぐわたし。彼は意地悪そうにニヤリと笑い、帰んぞと言って歩きだした。









寒い寒いとある日のこと。
あんなに冷えていたはずの指先は、何時の間にかじんわり熱を持っていた。














(あれ、靖友じゃないか?)(荒北もやるなぁ!!)(荒北先輩大胆ですねー)(校門ですよね、ここ)(楽しそうだな)






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