ハプニング御礼参り




「オラ、行くぞ。」
「……あい。」


弥生ありすはじめてのお礼参り…じゃない、事情説明に行く事になりました。




となりの席の荒北くん 04




あの後結局最後まで授業をサボってしまった。先生や担任には体調不良とその付き添いという、もっともらしい理由を付けて誤魔化したのだが…


「なんだ、そうだったのか。大丈夫か?…でもそれなら困ったな…さっきお前んとこの顧問に言っちまったんだよな…。」
「ハァ?!」
「ま、今から部活だろ?悪いけど直接言ってくれないか?」
「いや、わたしも部活…」
「そっちは言っといてやるよ。」
「ぅえ?!」
「じゃ、頼んだぞー。」


先生の薄情者!!あれは絶対説明するのが面倒くさくなったと見た。生徒を見捨てるのかあなたは!




「あ、の…荒北くん…(行かなくて良いと言って…!)」
「…行くしかねェだろ…」
「ははっ…ですよね…」





ーーーーーー




うう、ついに来てしまった。自転車競技部…!!
なるべくなら来たくなかったんだけどな…。だって自転車競技部でしょ?絶対いるじゃん。これって完璧なフラグじゃん!?
いや、まだ来てないかもしれない。そうだよ、パッと行って説明だけして帰ろう。



「着いたぞ。」
「あー…、うん…」
「入ンねーの?」
「うー…入る、けどぉ…」
「ンだよ、歯切れワリィな。」
「……荒北くんからどーぞ…」


ふーん…ま、いいけどォと言って
中に入って行く荒北くんの背中を見送りつつ、自分も行かねばとグッと拳に力を込める。




「(…よし、いくぞ!わたしはできる子!)失礼しm「あれ、ウサ子??」ぎゃああぁあ!!」




たっぷりと時間をかけて振り絞った勇気は、僅か数秒足らずで挫かれた。
振り返れば女子受けの非常に良い甘いマスクに笑みを浮かべる男子生徒。



「久しぶりだな!」
「うぅ、新開くん…お久しぶりデス…」
「あ、キャベツ食うか?」
「食べないよ!?ってか、それうさ吉くんのだよね!?」



袋に入ったキャベツをチラつかせながらグリグリと頭を撫でる(というか押さえつける)新開くんの魔の手から逃げようと藻掻くが、そこは男と女、運動部と文化部、圧倒的な力の差が有るわけで、敵わないと分かったわたしは大人しく彼が飽きるのを待つ事にした。



「あ、大人しくなった。」
「圧倒的な力の差に絶望しただけですー。」
「ハハ、そんかに不機嫌になるなよ。ほら、機嫌治せって。」
「だから、キャベツは食べないって……うぎゃぁああ!!」





結論からいこう。
持 ち 上 げ ら れ た 。





「ぎゃぁああ!な、なななにするの?!」
「いや、ウサ子の機嫌が悪そうだったからな。ほーれ。」
「意味がわからん!!おーろーしーてー!!」


小さい頃皆が一度は体験したであろうあの行為…そう、高い高い。
あれを今まさに体験している。
はっきり言おう、高校生になってこれは恥ずかしい!しかもここは学校だ。
なんて考えてる間に今度はそのままクルクルと回り出した。


「や、ちょっと!本当におろしてー!」
「ん?」


ん?じゃ、ねぇぇええ!!
いやいや、本当に恥ずかしいですから!みんな見てますからね?!ちょっと女の子にモテるからって調子に乗るなよ羨ましい!!

誰でもいいからなんとかして。じゃないと死ぬ。羞恥心で。
救世主よ、今現れないでいつ現れるのだ!今でしょ?!




ガチャ




「オイ!なに騒いでンd……」
「よ!靖友。」
「イヤイヤ、よ!じゃあねーヨ!何やってンだ馬鹿共。」
「馬鹿共って…あれ?好きでこの状態にあると思われてる?!」



部室前にいるのは今だ新開くんに持ち上げられているわたし、ムカつく位爽やかに笑っている新開くん、救世主荒北くん。
確実的に状況がややこしくなっている…!



「「「………」」」



「…ってか、お前ら知り合い?」



あぁ、今日は厄日だ。






(席替えのバカヤロー!!)
(とりあえずここじゃ目立つし中入ンぞ。あと、いい加減降ろしてやれヨ)
(いいんじゃないか?このまま運べば。折角捕獲したし)
(捕獲…)




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テーマ「人外ファンタジー」
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