ウィーズリーおばさんに改めて朝食に呼ばれて厨房に下りた時にはもうシリウスもモニカの姿もなかった。リーマスもウィーズリーおじさんは出掛けていたし、おばさんはあまりモニカの事を話したがらなかった。

その日の夕方、おじさんがキングズリーとトンクスを連れて帰って来た。それにリーマスも会議の後残ったので厨房はいつもより人が多かった。

「え?じゃあリーマスの首に残ってるそれ、モニカって人が絞めた痕なの?」トンクスが眉を寄せたのを、リーマスは笑った。

その話に混ざろうとしたけれど、おばさんに手伝うように言わられてしまった。食器を並べたり、芽キャベツが鍋から飛び出ないように見張る仕事を僕たちは任せられた。

「さあ、後は並べるだけね」おばさんがそう言って僕達も席に着いた時、リーマスはシリウスを呼びに厨房から出ていった。

みんなのコップにバタービールとワインが用意されて炒めたジャガイモと芽キャベツがテーブルに置かれた時、厨房のドアが開いた。

「ああ、モリーここにいたのね」大きな鞄を持ったモニカが現れた。「ダンブルドアから聞いてるかしら。私しばらくここに住むことになったんだけど、どこか部屋は空いている?シリウスに聞くより、あなたに聞いた方がいいと思って」

モニカは昨日の夜とは違うマグルの洋服を着ていた。モニカの言葉にフレッドとジョージが口笛を吹いたので、おばさんがふたりをキッと睨んだ。

「ええ聞いてますよ。待ってもらってもいいかしら?ちょうど食事にしようと思っていて」
「もし迷惑でなかったらご一緒してもいい?ばたばたと荷物をまとめていたから、きちんと食事をしていなくて」

モニカがひどく控えめな聞き方をしたので、おばさんも断る事が出来なかった。ウィーズリーおじさんは杖を振って、僕達の反対側にモニカの座る席を作った。

「アーサーありがとう」
「いいんだ。紹介しよう。キングズリー・シャックルボルトとニンファドーラ・トンクス。二人とも闇祓いとして魔法省で働いている」
「トンクスって呼んで」トンクスがつっけんどに言った。
「初めまして、トンクス。モニカ・ポートマンよ」モニカは愛想よく答えた。「キングズリーもよろしく」
「こちらこそ。君の名前は昔、聞いたことがあるよ」
「そうなの?」
「ああ、君の事は闇祓いの中ではちょっとした噂だったからね」
「悪い噂でしょう?」そう言いながら、モニカが左腕の内側をそっと撫でた。
「まあ、良い噂ばかりではなかったが」キングスリーは苦笑いして認めた。

「どういうことかしら、闇祓いがモニカの悪い噂をしたって」ハーマイオニーが囁いた。
「モニカが昔死喰い人だったとか?」ロンが言った。
「それなら、スネイプがモニカを迎えに行ったのも説明がつく」僕も頷いた。
「うーん」ハーマイオニーはどっちつかずの声を漏らした。

頭の中でロンの発言とモニカが腕の内側を撫でた事が結びついた。それを言おうとふたりに額を寄せようとしたけれど、戻って来たリーマスとシリウスの登場で中断することになった。

「いい匂いだ」リーマスはグリルド・マッケラルの大皿を運んでいるモリーににっこりしてから、キングズリーの隣に座った。シリウスは人の多い厨房をざっと見渡し、モニカの所まで視線が走った時目を止めた。

「今日は魚か、モリー」シリウスは露骨に嫌そうな顔だったけれど、そうさせたのはグリルド・マッケラルじゃないとはっきりと分かった。

ウィーズリーおばさんも席についた今、空いているのは席はモニカの隣しかなかった。リーマスが「座ってくれないと食事が始まらない」と急かしてやっとシリウスはモニカの隣に座った。

「さあ、食べよう」おじさんの言葉で、夕食が始まった。

「今日はどんな一日だった?」リーマスがワインを飲みながらモニカに聞いた。
「いい出来ではなかったわ。久しぶりに魔法を使ったらどうも上手くいかなくて」

それを聞いてシリウスは鼻で笑った。モニカは聞こえていないかのように、そのまま話を続けた。

「まあ上手くいった事と言えば、荷物をまとめる事ね」
「荷物をまとめる?」シリウスがジャガイモを突くのをやめて聞いた。
「聞いてないの?私がここに住むって」


望まない未来を生きていく


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