分かってくれるかな?


あいつのどこがいいかって聞かれたら、きっと俺ははっきりとは答えられない。あいつのことは、オンナよりも先に仲間として認識してた。だからあいつが男と付き合うようになって、一緒にいる時間が短くなって、馬鹿騒ぎすることが少なくなって、あいつらに向ける笑顔が俺に向けるそれとの違いに気づいて、やっとそこで自分の心のもやもやの正体がわかった。

もやもやを潰そうとなんだってやってみた。教室で理由もなく悪戯グッズを爆発させたり、廊下で誰彼かまわず決闘を仕掛けたり、スニベルスを魔法で呪ったり。声を掛けてきた女とはとりあえず遊んだり。そんな俺を見てモニカは「目立ちたがり屋―!たらしー!女の敵―!」と騒ぐだけ。男と別れた時すかさず慰めれば「いい友達」認定を受けて、またしばらくしたら別の男と付き合い始めて、俺は俺で相変わらずで、その男とも別れた時に二度目の「シリウスってほんといい友達」という言葉を受けて、もうこのもやもやの正体を無視するのはやめた。

それから、モニカにまた別の男が現れないように牽制しながら、自分の周りの女をすべて片づけた。それから今までの俺ならあり得ないくらい時間をかけて、やっとのことでモニカと付き合った。

つまり何が言いたいかって、それは俺が真剣だってことだ。モニカのことを泣かせることも悲しませることも、それから辛いこともさせたくない。嫌がることも、したくはない。だけど同時に、いつだって一緒にいたいし、触れたいし、キスも、セックスもしたい。男なら当然のことだし、相手がモニカだからこそ、だ。

「なあ、だめ?」
「…え、だめ」
「なんでだよ」
「この前したじゃん」
「3週間も前だけどな」
「たった3週間じゃん」

グリフィンドールの男子寮。俺の限界をとっくに超えてるため、同じ部屋のジェームズたちに無理言って一晩出てってもらった(リーマスを説得するのに、ハニーデュークスの菓子を今後定期的に貢ぐって約束をさせられた)。何を考えてか、何も考えてないのか、モニカはのんびり俺のベッドの上でくつろいでる。腰掛けてたリーマスのベッドからモニカの横に座って問いかければこの返事。なんで、毎日会う彼女と3週間もセックスできないのか、俺には分からない。モニカは処女じゃないし、邪魔が入らないとは言い切れないような場所でもしたことだってある。なのに、なんでわざわざルームメイトたちを追い出してまで整えた今日はだめなんだ。

「一応聞くけど、アノ日だから?」
「なんでそんなこと聞くの」
「だってお前がだめって言うからだろ」
「女の子の日じゃなかったら、いつでもしなきゃいけないの?」
「そうじゃねえけど。俺、おあずけ食らってて限界なわけ」
「タイヘンデスネ」
「俺もう限界超えて死にそうなんだけど」
「本当に死ぬか試そうよ」

そう言って、読んでたマグルの雑誌にまた視線を戻すモニカ。

「え、まじでアノ日?」
「………………うん」
「うそだな」

ええうそですけど!って自慢げに大声張り上げられたけど、できるのに、できないってこんな無慈悲なことあるのか。はあああ!溜まりに溜まったそれを、ため息で吐き出してモニカの隣に倒れこむ。ベッドのスプリングが弾んで、モニカの肩に乗ってた髪がはらりとシーツの上に落ちて、あのシャンプーの匂いが香った。おかげで、ため息じゃ到底処理しきれない欲がぐっこ込み上げてきた。恨めし気に隣に視線を送れば、面白がってるようにも申し訳なさそうにも見えるモニカと目が合う。

「…したい?」
「あー、まあ。でも今日はもうやめた」
「申し訳ない」
「いつか、きっちり相手してもらうから」
「いやん!」

けらけらと笑い声を上げるモニカの顔はいつも笑顔で、瞳がいたずらっぽく光ってて、今日はもうくだらない話でもして、同じベッドでだらしなく寝るだけでいいか、なんて思えた。