胸に広がるこの予感!


いつもより早く目が覚めた。覚めたものはしかたない。静かに着替えと身だしなみを済ませて談話室への階段を降りる。みんなが起きるまで何しようかなあなんて考えて最後の二段をジャンプで降りると、

「やあモニカ。朝から元気だね」
「おはよ、ジェームス。早いじゃん」
「君もね」
「なんだか目が覚めちゃって」
「奇遇だなあ。僕もさ」

先客がいた。
図らずも朝食までの時間を楽しく過ごすにもってこいの相手だったので、思わず口角が上がる。それがどういうことか伝わったらしくジェームズも負けず劣らずな怪しい笑みで応えてくれる。

「何する?」
「そうだね…」

ごそごそと、ジェームスが内ポケットから忍びの地図を取り出した。まだどの寮生も寝ているみたいで、動く足跡は見当たらない。

「それじゃあ、『墓場腕』でも仕掛けようか」

いいね、ともう一度ニヤリと笑みが出た。





スリザリンの寮から大広間へ途中に墓場腕をこれでもかと用意する。どんな反応をするか見たいのでジェームズとふたり透明マント包まって待機。その後数十分の間、スリザリン生がこぞって床から飛び出た腕に足を掴まれて、転んで驚いて怒鳴り散らしてるのを見るのは愉快だった。あまりに予想通りの反応が可笑しすぎて、透明マントの下で笑いをこらえるのは拷問。お腹も痛いし、涙も出る。もうダメかもって時に、やっとスリザリン生がみんな大広間へ行ってくれた。





「もう、死ぬかと思った」
「見たかい、エドガーの引っ掛りっぷり!」
「しかも二回!!」
「あんな鈍臭い奴がクティッチの選手だなんて信じられないね!」

横っ腹が痛いままだけど、なんとか大広間に着く。混み合った大広間でシリウス達を見つけて、するりと隣の席に着く。向かいのリーマスと少し離れた場所にいるリリーが怖い顔で見てくるけど、気づかないふり。監督生は怒らすと強いからね。

「みんな、おはよ」
「お前たち朝から何してたんだよ?」
「良くぞ聞いてくれた、パットフット!」

そう言って、ジェームズが朝のことを話し始めた。思い出してまた笑いが止まらなくなって、途中で持ってたかぼちゃジュースを零すなよってシリウスに取り上げられてしまった。シリウスもニヤリと笑ってるし、良い顔をしてなかったリーマスもエドガーの所で我慢できなくなったらしく吹き出した。

「俺がいる時にやってくれよ」
「だって、たまたま今日早起きだったんだもん。朝早い方が、墓場腕仕掛けるのにはちょうど良いねって話になったの」

そう言えば、少し拗ねたようなシリウスが私が口に運ぼうとしたトーストを横取りした。

「あ!ジャムとバターちゃんと端まで塗ったのに!」
「油断してるモニカが悪い」
「えー、もう食欲失せた。やる気も失せた。今日はもう、ご飯も食べないし、授業出ないー」
「お前は子供か」
「十代はまだまだ子供ですよおーだ」

そう言って、いーっとすれば、シリウスに馬鹿かと笑われた。それから、トーストを半分返してもらって、ついでに頭をクシャクシャと撫でられた。
それからぺちゃくちゃとたわいもない話をしていれば、同じ授業を取っているリリーに呼ばれた。じゃあね、と席を立てば、シリウスに腕を引かれて触れるだけのキスをされる。

「もー恥ずかしいじゃん」

赤くなる頬には気づかないふりして、シリウスにクレーム1件。何でもないって顔をされたので、もう一度いーっとやって、逃げるようにリリーの隣に走り寄る。

「相変わらず、仲良しね」

リリーにそう言われ、恥ずかしいのに嬉しくって、へへへと抜けた笑顔になる。今日も良い一日になりそうだ!