04
4時限目が終わって教科書を片付けてると、前の席のミヨちゃんが「お弁当忘れたー」って振り返って来た。
「私、今日購買行こうと思ってたから、一緒に行こう?」
「んー、今週の日替わり、みそラーメンだった気がするから、学食がいいなあ」
そうなんだ、じゃあ学食でもいいかもね、なんて話してると、
「水木、俺らも学食行くけど?」
田中が佐々木を連れてふらっと寄って来た。首をかしげてると、「奢るって約束したべ?」と言われてああ昨日のか!って思いだす。
「ご馳走様ですー!」
「なんの話?」
「昨日、補講で答え教えてあげたからそのお礼」
「田中、お前ほんと運動しかできねえよな」
佐々木がそう言うと、田中は佐々木に肩パンしてた。転校してまだ一か月も経ってないけど、クラスのひとたちとは楽しくやれてると思う。
「いいだろ、勉強のことは。それより、混む前に行くべ」
ぞろぞろと四人で食堂に向かう。教室を出たころは、四人で田中の過去の赤点秘話を話してたけど、いつのまにか、後ろにいるみよちゃんと佐々木は楽しそうに二人で別の話をしてた。よくぞ佐々木を連れて来た。絶対狙ってやってないけど、いい仕事するじゃんと、横を歩く田中の肩軽く叩く。
「んだよ、いきなり!」
「田中が馬鹿で良かった」
そう言えば、ああ?!とヤンキーみたいな顔された。全然怖くないけど。
「あ、」
一階まで降りて渡り廊下を歩いてると、田中が声をあげた。田中の視線はグランドに向いてて、追いかけて、すぐ何を見て声をあげたか分かった。たぶん、外での体育の授業だったらしい集団が、ぞろぞろ校舎に向かってくる。その集団の後ろの方でかったるそうに歩く、まわりの男子から頭がひょっこり飛びててる蛍が見えた。目が合った気がしたから手を振ったら、あからさまにそっぽ向かれた。でも隣にいた忠が蛍のことを気にしながらも小さく手を振り返してくれたから、まあいっか。
「なー、水木と月島と山口ってどういう知り合い?」
「どうって言われてもね」
いつか聞いてくるかとは思っていたけれど。
「ツッキーには聞かなかったの、田中先輩?」
「今日、朝練のとき聞いたけどよー。『田中さん、無駄口叩いてるより練習した方がいいんじゃないですか』って言われてよ!」
「あはは、想像できる」
「あいつ、まじ生意気だ」
「それは昔からだからねえ」
「昔ってどのくらいの知り合いなんだ?」
「まあ、小中のときの知り合い、みたいな」
「でもお前、月島たちより学年1っこ上じゃねーか」
「ご近所さんみたいな、ね。あ、田中、ごちそうさまー」
学食の券売機に辿り着いたところで、両手をすり合わせてアピール。舌打ちした田中は潔くお財布を取り出して、「あ小銭ねえ」とぼやいて、お札を自販機に入れた。それでは、お言葉に甘えて、ハンバーグ丼と唐揚げと日替わりデザート。
「樹里何にしたの?」
「ハンバーグ丼」
「田中が後ろで泣き真似してるけど?」
「せっかくだからサイドとデザートもご馳走になりました。半分こしよー」
「いえーい!」
みよちゃんとにんまりして、食券を持って配膳の列に並ぶ。
「みよちゃんは、みそラーメン?」
「うん。佐々木がコーントッピング奢ってくれた〜」
へえ。佐々木やるじゃん。
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