閉じた瞼から感じる日の光で朝が来たことを知る。起きなきゃという気持ちよりも、まだこうしてシーツに包まれていたい気持ちが強かった。
モゾモゾともっとシーツに包まろうとすると、腰に回された腕に気がつく。夜ベッドに潜る時にはなかった自分以外の熱がそこにあることに安心感を覚える。寝ているであろう彼を起こすのは申し訳ないと思いつつ、彼の鎖骨に擦り寄るように頭を寄せれば、一瞬寝言とも分からない喉の奥を鳴らすような音が頭の上から聞こえてきた。

「…シリウス?」

小さな声で呼びかけてみる。もし寝ていたら悪いなと思って一言かけてじっとしていると、返事の代わりに私の頭のうえにあったシリウスの手がもぞっと動き私の髪を鋤き始めた。

「起きてるじゃない」
「………ん」
「いつ帰ってきたの?」
「…2時頃」
「そのちょっと前まで起きてたのに、眠くて先に寝ちゃった」

クタクタだったはずのシリウスの帰りを待たずに寝たことに良心がちくり。ごめん、だって眠かった。少しいじければ、シリウスの手が優しく頭に置かれる。

「ナマエの寝顔観察できたからいい」
「…見たんじゃなくて?」
「観察」
「え、それ気持ち悪い。シリウスの変態」
「ヨダレ垂らして寝てる奴に言われたくない」
「うそ」
「本当」
「うそでしょ?」
「本当だって。あんな口開けて寝る奴初めて見た」

うそだ。え、うそでしょ。私、女の子なのに…。信じられない、そのことは忘れて、ってシリウスに頼めば、頭の上でククッと喉を鳴らして笑われた。

「うそ。でも寝顔にキスしたのは本当」

さらりとそんなことを言うもんだから、ほっぺがかあっと赤くなった。

「それも嘘でしょ」
「これは本当だから」
「信じません」
「本当。頬にも、唇にもした」

寝込み襲うなんて、やっぱり変態!恥ずかしいやらムカつくやらでどんどん顔が赤くなる。文句を言ってやろうとシリウスを見れば、シリウスの灰色の視線もこちらに注がれてた。どうやら、目が醒めているらしいシリウスは、ばっちり私に視線を注いでいて、私が大嫌いなあ厭らしい笑みを浮かべていた。ヤバい、と思った時にはすでに手遅れ。ぐるりと視界が回ったかと思えば、シリウスが覆いかぶさるようして私を見下ろしている。

「でもつまんなかった」
「つまんないって何が?」
「寝てる時にキスしてもナマエの反応ねえから」

例えばさ、と上から啄むようなキスをされる。不意打ちで、顔はさらに熱って、しまいには目が少し潤んでくる。悔しいのでキッと睨めば、反対に満足そうに笑うシリウス。


ある朝のこと


「そういう反応がたまんない」

そう言って、降ってくるキスの雨。恥ずかしくて堪らない。