※不健全、グロ(?)注意










どうしてこうなったんだろう。彼女が大広間で女友達とおしゃべりをして、天使みたいな暖かい表情で頭を後ろに倒して笑うのを見て、そう思うことがある。クディッチの試合でいつも観戦スタンドの一番前から身を乗り出して、グリフィンドールに声援を送る(たまに、相手チームに彼女が知りうるあらゆる汚い言葉を浴びせる)姿を見てそう思う。試験前にいやだつらいと泣いた振りをしながらも図書館で本と羊皮紙に向かって勉強するのを見て、そう思うことがある。

どうして、こうなってしまったのか。僕には分からない。いつも楽しそうに弧を描いている唇は、いま震えて小さく開いている。その唇の隙間から零れるのは悲鳴のようなか細い声。ぼんやりと僕を見つめている彼女の顔は苦痛で歪んでいて、その瞳に映る僕だって苦しい表情をしているに違いなかった。

僕はそっと彼女の頬に手を添えてキスをしようとした。

「い、や……だめ。やめ、…て」

そう言って彼女は近づこうとする僕の押し返そうとする。彼女の力は大したことはないけれど、それでもいやだという彼女の言葉を素直に聞き入れ、頬に触れていた手を放す。彼女の頬には僕の手の形をした真っ赤な痕が残った。血だ。彼女の手首を切った時に溢れたものだ。

彼女の頬を汚してしまったと、僕の心が悲鳴を上げた。代わりに、彼女が喜ぶことをしようと思う。きっと彼女は声を上げることになる。僕は彼女の下着を脱がすと、うっすらと開いて閉まることを知らない口に押し込んだ。くぐもった声が聞こえる。こうしておいたほうがいい。靴下を脱がして、スカートを捲る。彼女の両足の間に入ってそこを見れば触ってもいないのに濡れている。分かっているのに、虚しくなる。

そっとベルトをはずしていると、彼女は肘をついて身体を起こしじっとこちらを見ている。僕は彼女を見ながら、ズボンを下ろした。それからゴムをつけてぐっと彼女の中に押入る。躊躇せず、力強く。彼女が下着を咥えた口から叫んだ。僕は彼女に覆いかぶさり、片手で口を塞ぐ。最中の彼女の声は聞きたくなかった。僕はただ、達するだけのために腰を振る。空いている方の手で彼女の脚を持ち、さらに奥へ奥へ。彼女が気持ちいいかは問題じゃない。問題なのは、僕が激しく彼女の中に押し入っていることだった。

最後にもう一度ぐっと奥をつくと、僕は達した。息を吐いて、僕は彼女の中から抜き取る。ゴムを外して、彼女の横にぐったりと横たわる。いつもだ。彼女とした後はいつも疲れる。身体も心もうんざりするほどぐったりとしてしまう。

「…泣いてる」

口から下着を取った彼女は僕の方を見ると、そっと指の腹で僕の頬を撫でた。知らぬ間に僕は泣いていた。きっと彼女の手について固まっていた血を溶かして、ほんの少し僕の頬に血の跡を残したに違いない。いつも顔色の悪い僕だから、ちょっとは血色がよくなったかもしれない。そう考えて、なんだか全ておかしくなって、笑いたい気持ちになってしまった。こんなときに笑うのなんて場違いなのだけれど、結局我慢できずに、肩を震わせて笑い声を上げることになった。笑うたびに涙がこぼれてしまう。それもおかしくて、余計に笑うことも泣くことも止まらなくなる。

「泣きながら笑うなんておかしな人ね」
「君も、おかしいよ」

そう言えば、彼女は満面の笑みを浮かべた。嬉しそうに、頷く。それから、彼女は僕の方に腕を差し出した。

「舐めて」

僕はくたくたに疲れていて、なんとか頭だけ持ち上げて彼女の手首に吸い付く。傷口を舌で舐めれば鉄の味がする。けれど、それだけじゃ十分じゃない。そっと噛みついて歯を立てる。そうすると、もっと血の味がする。そして、彼女は苦痛で顔をゆがめる。それが彼女の喜びだ。僕にキスのひとつもさせないのに、彼女は僕に手首を切らせて血を飲ませて、傷口を噛ませる。その上無理やりみたいな行為をさせる。それが、彼女だ。痛みが彼女の至極の喜びだ。

「ああ、リーマス。泣かないで」

泣かずにはいられない。彼女はおかしい。これが彼女にとっての喜びだなんて。苦痛からしか愛を感じられないなんて、どうしたっておかしい。僕は彼女を愛したかった。そして、あの天使のような彼女の愛をほんの少しだけ感じたかっただけだった。どうしてこうなったんだろう。

「あなたが泣いていると私も泣きたくなるわ」

そう言って彼女はぎゅっと僕を抱きしめた。違うんだ、君を泣かせようと泣いているんじゃないんだよ。そう言いたいのに、僕はただただ彼女の腕の中で静かに涙を流す。彼女が倒錯した愛しか知らないということがどうしようもなく僕の心を締め付ける。止めなきゃと分かっている。でも、彼女の腕のぬくもりを知ってしまった僕にはそれができない。だって、こんなにも暖かい安らぎを彼女は僕にくれる。

どうしてこうなったんだろう。僕は彼女を愛したかった。だから彼女の知っている愛し方で、彼女を愛する。僕の心は悲鳴を上げて疲れ果てていく。それを彼女の腕の中で実感する。その時やっと僕は彼女の愛をほんの少し感じることができる。こんなのって、おかしいに決まっている。でも、どうしてか、僕と彼女はこうなってしまったんだ。

「リーマス、好きよ」
「…僕もだよ」