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「#幼馴染」のBL小説を読む
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あい・まい・みー

※ロー視点です。


「ひーまー」
「‥‥」
「たいくつー」
「‥‥」
「ねくらー」
「おい、聞き捨てならねェぞ」
「あはは!聞こえてた!」
「ちっ」

このふてぶてしくも包帯ぐるぐる巻き女は、なんてったってこうも自由気ままなんだ。
おれは隠す事もせずに盛大な溜息を吐いた。
事の始まりはワノ国に入国して早々、奴隷のように扱われていたこの女を麦わら屋が見兼ねて助けちまった事が切っ掛けだ。
何の見返りもなく人を助ける海賊なんぞ、今日日、見た事も聞いた事もねェぞ。
おまけにだ。その女の看病をこのおれに押し付けてきやがった。「トラ男ならコイツのこと治せるだろ」って、何だそれは。人任せか!?
それに肝心のこの女、人の言う事を全く聞きゃしねェぞ。
布団の上でじっとしていない事は当たり前。余計な怪我は増やす。ベポと喧嘩をする。流石はユースタス屋の実妹だ。
だが一番の問題といや、

「コイツの頭の悪さは俺でも治しようがねェぞ」
「ごしゅーしょーさまです」
「お前がな」

この頭の中に何も詰まっていないような言動だ。思ってる事をドストレートに発言するお陰もあって、うちのペンギン達とはよく下らん喧嘩をする事が多い。
その部下達には使いを頼んでいるから今は平穏無事でいられてるが、これもいつまで持つのやら。
また何度目かの溜息を漏らしそうになった時、このアクティビティ溢れる女は何で海賊という無法者になったのか、ふと疑問が湧いた。
いや、疑問という程のものでもなかったかもしれねェ。ただ単におれは興味を持ったのだ。
おれの妹は夢や将来云々を考える前に死んでしまったから。

「…何でお前はユースタス屋に付いて行こうと思った」

そんな事を考えていたからか、気付けばそう尋ねる自分がいた。
後悔してももう遅く、ぽかんと口を開けた間抜け面の女がこちらをじっと見てきた。
そうして、

「その方がおもしろいからだ」

即答で答えてきた内容に呆けてしまった。そんな理由で海賊になったのかよ…!?
コイツ、どうやら人間として可怪しい部類のようだ。おれの妹はどうの以前に、聞く相手を間違えてしまったらしい。

「兄ちゃんはすごいんだぞ!なんたって知らない世界につれてってくれるんだからな!」

良い事言ったようなドヤ顔してるけどな、「ちょっと、やな時もあるけど」ってボソっと呟いたの聞こえてんぞ。
全く、この女相手だと、深く考えんのも馬鹿らしくなってくる。だが裏を返せばユースタス屋やその仲間達もおれと同じ思いをしてるのかもしれねェ。
おれは試しに目の前の女に対して怒鳴り散らすユースタス屋の姿を想像してみた。少し胸の中がスッとした感じがした。

「何わらってる!?やんのか!?」
「いいから寝てろ。また傷口開くぞ」

ぎゃあぎゃあと騒ぐ相手の頭を無理矢理押さえ込み、茣蓙の上へとまた寝かす。
この女とおれの死んだ妹を混同するような真似はもうよそう。考えても無駄な事だ。
そう、おれの中で密かに決意しながら、コイツの病人食の事でペンギン達に頼み事があったのを思い出した。



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