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ある日森の中くまさんに出会った

目の前でリリアーヌが伸した海兵が白目を剥きながら、ぷるぷる震えている。
いや、よく見てみると懐にいた電伝虫が紛らわしくも、ぷるぷる鳴いているだけだった。
気持ち悪ぃなと眉を寄せるキッドの横で、リリアーヌが徐に電伝虫の受話器を持ち上げた。

「はい、こちらリリアーヌ。ただ今交戦ちゅーです。どうぞー」
「お前ェは何してんだよ!?」

バシッと勢いよくリリアーヌの頭を叩くキッド。電伝虫からは案の定「誰だ、貴様は!?」という厳ついオッサンの叫び声が聞こえてきていたが、ワイヤーが受話器を何事も無かったように元に戻していた。

「お前は!いい加減!馬鹿な事!すんのを!やめろォ!!」

調子を取りながらキッドは愚妹の両頬をぐにぐにっと引っ張り上げた。彼女の頬は弾力性がある分、引っ張れば餅のように伸びていく。

「はひふんは!はへほー!!」

リリアーヌも、自分の頬から兄の手を引き剥がそうと四苦八苦するのだが、全くもって外れない。
それ所か、最初は怒っていた筈のキッドも今では「何言ってんのか分かんねーなー」と楽しげな様子で、何度もリリアーヌの頬を伸び縮みさせていた。彼の表情には、もう先程の怒りなど微塵も感じられなかった。
最早お気に入りのオモチャで遊んでいるようにしか見えない兄の姿に、リリアーヌは涙目になりながら横で成り行きを見守っていたキラーに必死で助けを求めた。

「もうその辺にしておけ、キッド。リリアーヌも少しは反省しているだろ」
「フンッ。コイツが自分の行いに反省する日がくる事なんて、一生無ェだろう…よっと!」

キラーの制止の言葉に最後の抵抗とばかりに、ぐにっと思いっ切りリリアーヌの頬を抓ったキッドは背後から駆け寄ってきた部下達からの報告に耳を傾ける。
どうやら無事、シャボンティ諸島同士を結ぶ橋は壊し終えたらしい。これで追手の海兵達の足止めが叶う事だろう。

「行くぞ、リリィ」

抓られた両頬の部分を擦って、おおお…と呻いていたリリアーヌにキッドが声をかけると、彼女はすぐに立ち直ってキッと睨む。かと思えば、実の兄を指差しながら高らかに訴えた。

「兄ちゃんなんて、空から降ってきたインセキでつぶれてしまえばいいんだ!!」

そう叫んだ直後、

──ドシィィィンッッ!!!!

とリリアーヌの言葉が合図にでもなったかのように、その巨体は轟音と共に突如姿を現した。

「ホントにインセキ降ってきた!?」
「「「んなわけあるか!!」」」

リリアーヌの呆けに仲間達が鋭い突っ込みを入れるその横で、キッドとキラーの二人は目の前の巨体の正体に気が付き、緊張で身体を強張らせた。

「あれはまさか…」
「なんで、この島に」

それは、時に政府に協力し、時に海賊や世界政府未加盟国から略奪行為を行う、キッド達と同じ海賊でありながら海賊達の脅威となる存在。

「──王下七武海の一人がいやがるんだッ!!?」

世界政府に公認された七人の大海賊の一人が道を遮っていた。



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