これは、夢だろうか。

銀時が、自分から俺に抱き着いて来た。
その行動に驚きつつも、そっと引き寄せてやると甘えたような仕種で俺に擦り寄って顔を埋める。
その猫のような仕種に、言いようのない愛しさを感じた。

「どうしたんだ、銀時」

「別に…」

そう言って再び顔を埋める。こんな仕草をされて普通俺が理性を保っていられるわけもないはずなのだが…何故か今は自分でも驚くくらいに心が落ち着いている。


「本当にどうしたんだ銀時。お前、普段はこんなこと土下座して頼んでもしてくれないだろう」


そうして再び問うと、銀時は少し視線を交錯させた後、ゆっくりと顔を上げる。その紅色の瞳で俺を見上げながら(死んだ魚の目?馬鹿な、死んだ魚の瞳がこんな鮮やかな色を映すものか)仕草に負けず劣らず甘えた声を出した。


「なぁ今日誕生日なんだろ?俺のこと…好きにしていいぜ…?」




嗚呼神よ、俺、今すぐ死んでも悔いはないです。









〈比翼連理〉










「ぶほっ…」

お言葉に甘えて素直で可愛い銀時を押し倒そうとした瞬間、顔に衝撃を受けた。驚いて目を開ければ、目の前には先程まで可愛らしく俺の腕に収まっていたはずの銀時が、眉を潜め物凄く嫌そうな顔で俺を見ていた。


「お前気持ち悪ィ…何寝ながらニヤついて人の名前連呼しながら鼻血流してんだよ、何で起きて早々こんな不快なモン見なきゃなんねェんだよ」


同じ布団に収まっているにも関わらず甘い雰囲気など感じられない銀時の声音に、ようやくハッキリ目が覚める。どうやら先程までの夢のような出来事は本当に夢だったようだ。顔面をはたかれて起こされたらしく、顔が少しヒリヒリする。
鼻の辺りを拭ってみると、手が赤く染まった。布団にも多少付いてしまっているようだ。

「あぁ、すまん。ちょっと素晴らしい夢を見ていてな…」

「オメーの言う素晴らしい夢はたいてい俺にとっては悪夢だろーが」

「悪夢じゃない俺の願望の具現化だ。可愛かったぞォ?自分から俺に抱き着いて甘えた声で『なぁ今日誕生へばァ!」

「あー聞きたくねぇ聞きたくねぇ。てめぇの夢の中の俺は断じて俺じゃねぇから、てめぇの妄想が生み出した虚像だから」

夢の内容を語ろうとしたらグーで殴られた。
うむ、確かに他人の夢内の自分の話を聞くというのは変に恥ずかしい気分になるものだからな。銀時も照れるのだろう。
全く、夢でも現実でも可愛い奴だなこのこのォ。

「オイ、途中から心の声がだだ漏れてんぞ。やめてくんないその腹立つプラス思考。最後のこのこのォに殺意が湧く」

「俺の心を読み取れるとは…やはり俺達は以心伝心の仲だな」

「やめろっつったのにやめる気0かそのポジティブシンキング」

「というわけで今日は俺の誕生日だ」

「何が『というわけで』なんだよ何も話繋がってねーよ……あーもーただでさえだりィのにお前の相手してるとマジで体力尽きる…」




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