背の高い真ちゃんに遅れないように一生懸命歩く。高いヒールを履いても40cm近くある身長差は、いろいろなところでネックになる。例えば、ベッドの中とか。
雪道を転ばないように、真ちゃんに心配かけたり笑われないように、地に足をつけて歩いた。あまりにも歩くことに真剣になっていたせいで真ちゃんが手を差し出してくれていたことに暫く気づかなかった。

「…そんな風に歩かれたらこっちがひやひやするだろう」

不器用だけど真ちゃんなりの優しさ。それをわたしに向けてくれるだけで、幸せで涙が出る。手袋越しの真ちゃんの大きな手は温かかった。人事を尽くしているから、冬は手袋をする真ちゃん。わたしはしない。本当はちゃんと手を繋ぎたいけど、外さないちゃんとした理由を持っている真ちゃんもかっこいいからいいの。
真ちゃんが大きく1歩踏み出す時、わたしは必死に2歩歩く。真ちゃんの長い足だと放っておいたらどんどん先に行ってしまうから。だからわたしは頑張って真ちゃんの隣を歩けるようにせっせと足を動かすのだ。

今年何度目かわからない雪が降ってきた。舞うように落ちてくるそれが、真ちゃんの紺のコートについて、溶けるように消えていく。空を見上げた。暗くて何もわからないけれど、星が見えないからきっと雲がかかっているのだろう。どうかこの雪が降り続いて積もりませんように。明日はせっかくの真ちゃんとのドライブデートなのに。雪かきから始まる休日なんて…………少しいいかもしれない、と思った。そんな日常のアタリマエも、全部真ちゃんとなら幸せに変換できる。朝起きて夜眠って、また起きて。すべてが真ちゃんと一緒なら、日常も非日常になって、幸せ。それがまた日常になって、そうなったことに幸せを感じる。

「さっさと買い物して帰るぞ」
「そうだね。真ちゃん、何食べたい?」
「暖かいもの」
「うーん、煮込みハンバーグとか作っちゃおうかなあ!」

緩んだ手をしっかりと繋ぎ直す。真ちゃんがその手をコートのポケットに入れた。嬉しくなって寄り添うと、転ぶだろう!と怒られたけど気にしない。相変わらず真ちゃんの1歩は大きくて、わたしは小さい。それでもいい、だって一人で歩いていくことは決してしないから。いつだって真ちゃんは立ち止まって、わたしのことを待っていてくれるから。




121229
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