いつもの、ほんの些細なことで喧嘩をした。ちょうどタイミングよく鳴った、友達からの着信。

「ほんっっとダメもとなんだけど、人足りなくて。合コン行けない?」

わたしの返事は隙を与える間も無くYESだった。







「じゃあ、とりあえずお疲れ様!かんぱーい!」

社会人との合コンなんだけどね、と後付けされた情報により今日はタダ酒かなーなんて下心もあったりなかったり。メンバーはわたしのほかに大学の友達3人だった。少し早めに入店し、気心の知れたメンバーで談笑。時計を見ながら遅刻だね、なんて話してると個室のドアが開いた。


「遅れてごめんね〜」


スーツを着た社会人が4人。第一印象は、悪くない。イケメン2人。あ、ひとり前に座った。ラッキー、と思いつつも少し居心地が悪い。最近は女子会以外で飲みに出ることはなかったし、今更ながら少しの罪悪感。
でも、あいつだっていつも家でわたしの前で堂々とグラビア誌広げて、あわよくば一緒にAVを見ようとするのだ。飲むだけ、だし。これくらいしてもバチは当たらないはず、だ。

乾杯をして、自己紹介タイム。名前当てとか超古い。おっさんかっての。会話もあまり盛り上がらず、ご飯も特別美味しいわけでもなくてお酒だけが進む。つまらなすぎて酔いもまわらない。あーあ、来なきゃよかったな。当て付けのように来た合コンに後悔した。わざわざ今日おろした新しいニットも、行く前になおした化粧も、無理してはいたハイヒールだって全部無駄。もともとこれは全部青峰と出かけるときのために買ったものなのに。なんでこんな人たちのために。なんで今日きちゃったんだろう。


「飲んでる?酔ってない?」
「飲んでますよ〜ほら、こんなに!」
「ほんとー?もっと飲みなよ」


向かいに座るイケメンに愛想笑い。こんなにかっこいいんだから遊び放題なんだろうな、なんてボーッと考えながら新しいお酒を注文した。ここで日本酒とか頼んだらドン引きされるかなあ。と思ったが残念ながらわたしは日本酒なんて飲めない。斜め前に座る人は甘いカクテルをチビチビ飲んでいる。かっこ悪いなあ、なんか。青峰はとりあえず生、って言って豪快に飲むんだけど、あれけっこう好き。はあ、早く帰りたい。
向かいに座るイケメンはくだらないことをペラペラとしゃべり続ける。時折下ネタなんかを混ぜながら、これで盛り上がると思ってんのかな。女の子みんなドン引きですけど。あーもう面倒、と隣に座る友達を見ると、視線を逸らされ「ごめん、お手洗い」
逃げたな!!







「じゃあ女の子は2000円で、俺らは3000円で」


奢りじゃないのかよ!女の子全員の心の声が聞こえた気がした。奢られるのが当然とは思っていない。でも、こっちは学生で、向こうは社会人なのだ。面白くない上にケチかよ、これ見るといくらデルモ(笑)なんてからかっていた黄瀬がいかにハイスペックだったかがわかる。黄瀬ごめん、女ったらしでもレディファーストな黄瀬が今はとてもイケメンに見えるよ。
お店を出て外でまた少しの会話をする。早く帰りたい。帰ったら謝って今日は一緒の布団で寝よう。青峰の腕の中で眠りたい。


「また飲もうね。そうだ、アドレス交換しようよ」
「えーっと、そうですね…。また友達に呼ばれれば行きますよ〜」
「今度さ、美味しい店も知ってるし行かない?ふたりで」
「あー…それは、」
「うっせーなジジイ。やらしー目で見んじゃねぇよ」


は?突然掴まれて引き寄せられた体。でも、この声の持ち主をわたしは知ってる。この温もりを、わたしは知ってる。


「青峰!」


世界で一番愛しい人の、それ。


「おい、行くぞ」
「はっえっ、ちょっと!」


強引に腕を引かれて、ハイヒールだったので思わず体がふらついた。抱きとめられて、青峰が歩幅を合わせてくれる。ちらりと後ろを振り向くと、先ほど逃げたと思った友達が笑顔で手を降っていた。あいつか。


「何してんだよ」
「……ごめん」
「ボケっとしてんな。食われんぞ」
「そんなことしないし!だいたいつまんなかったしもう会うつもりもなかったし」
「面白かったら会ってたのかよ」
「会うわけないじゃん。……ばか。ごめん」
「わかりゃいーけど」


何でわたしがこんなに一方的に謝らなくてはいけないのか、少々の理不尽さを感じつつも、黙って握られる手を握り返した。やっぱりわたしはこの暖かさが好きだ。


「青峰ー」
「なんだよ」
「今日くらいは一緒にお風呂入ってもいいよ」
「当たり前だろ。それぐらいしろよ」
「何それ!元はと言えばねー青峰が!あーあ、また合コン行っちゃお」
「は?ふざけんなよクソビッチ」
「彼女にたいしてそんなこという?!」


いつもの、どうでもいいような小さな喧嘩。でもこれが、わたしたちの日常で、わたしたちなりの愛し方。





121208

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