家に着いたのは時計が0時を過ぎた頃だった。鍵を差し込みドアを開こうとしたのだが、ガチャンと閉まったまま。いつもあれほど戸締りには気をつけろと言っているのに、と帰って早々説教することを決めてもう一度鍵を捻り今度こそドアを開けた。リビングから漏れる光を頼りに暗い廊下を進む。ドアを開けるとそこには、二人分の夕飯を置いたテーブルに突っ伏して寝る彼女の姿。今夜は遅くなるから先に食べて寝ていろとメールしたはずだ。彼女だってわかったと返事をくれたはずなのに。でも、なんとなくこうなるのではないかと思っていた自分もいる。俺は彼女に十分すぎるくらい愛されているのだ。起きていたらどうせ、お腹空いてなかったから待っていたの!とでも言うのだろう。だがしかし戸締りだけは注意しなくてはならない。

ラップがかかった夕飯に視線を向けた。彼女の趣味で買った可愛らしい皿に盛られた、栄養を気遣った料理。今夜は何食べたい?と聞かれても何でもいいと答えるのは本当にそうだからだ。彼女の料理は何だって美味しい。でもそれを言葉にするのは自分には酷く難しいことで。彼女はいつもかっこいい、大好き、と言葉と態度で示してくれるけど、俺は。そんなことを彼女の前で考えていると、いいよ、いてくれるだけで幸せだしわかってるもん、言う。彼女に言わせてみれば俺はわかりやすい性格をしているらしい。何とも解せん。

未だ突っ伏して寝る彼女の体を起こさないようにゆっくりと抱き上げた。いわゆるお姫様抱っこである。昔より重いその体を労わりながら寝室に運ぶ。ベッドに寝かせ、布団をかけようとした時、彼女の目がゆっくりと開いた。


「真ちゃん…?」
「夕飯食べ終わったからもう寝るのだよ」
「うん…おやすみ…」


再び彼女の目が閉じられホッとした。寝ぼけているうちに寝かせないと、待ってると言い出しかねない。そっと布団をかけ、彼女の膨らんだお腹を撫でた。もう守るべき人は一人ではない。大切にしなくては。すやすやと幸せそうに眠る彼女はいったいどんな夢を見ているのだろう。自意識過剰かもしれないが、きっとこの表情は俺が出ているに違いない。幸せだな、俺は。そう思いながら寝室を出て用意されていた夕飯を電子レンジで温めた。

おやすみ、よい夢を。





121002
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