「大好き!」

彼氏にそう言って腕に抱きつく友達を見て羨ましくなった。止めろ、と言いながらも満更ではなさそうな彼氏さんも、それに気づいてにこにことする友達も、ふたりともとても幸せそうで。じゃあね、ととても可愛い笑顔で手をブンブンと振りながら帰って行く友達は、わたしから見ていれば世界で一番の幸せ者に見えた。たくさん愛して、愛されて、言葉にして伝えて、素直な女の子はかわいいなあ。そう思って自分に嫌気がさした。昔から捻くれてて、天邪鬼で、そんな自分が嫌だった。あいつはそのままのわたしを好きと言ってくれたけど、本当なのかなっていつも思う。もっと素直になりたいのに。好きってたった2文字が言えない。しょうがないから付き合ってあげるよ、なんて強がってみたあの時から、多分きっとわたしのほうが大好きなのに。愛されてるとは思う、けどそれを丸ごと信じられるほどわたしは自分のことを好きではない。大好きだよ、愛してるの世界で一番。とっくの昔から思ってる。伝えたら、あなたはなんて返してくれる。笑うかな、それとも黙って両手を広げてくれるのだろうか。一枚上手なあいつがむかつく。馬鹿で阿呆でエッチなことしか考えてないくせに、かっこいいのがむかつく。いつもわたしが照れてしまうことばかり言うから、むかつく。大嫌いになるくらい、大好き。



家に戻るとちょうど夕方のドラマの再放送がやっていた。数年前人気だった、コテコテの恋愛ドラマ。こんな風に、素直に言葉にできたなら。大好きよ、愛してるって、わたしからキスして抱きしめたい。何でだろう、何でわたしなんだろう。青峰のバカ。巨乳のほうが好きなくせに。わたしのことをいつまでも隣に置いて、何を考えているんだろう。わたしばっかり好きでほんとは嘲笑っているのかな。むかつく。嫌い。でも、好き。青峰のことしか考えられない、いつだってわたしの頭の中は青峰でいっぱいなのは、わたしだけなの?


「ただいま…っておまえ泣いてんの」


タイミング悪く帰ってきた青峰に言われて、はじめて頬に涙が伝っていることに気づいた。泣き顔見られたのは初めてではないけれど、やっぱりなんだか嫌。負けた気がするから。こんなこと考えるわたしはやっぱり可愛くないなあ。考えはじめたら止まらなくて、次々と涙が溢れる。早く止まってよ。止めたいと思えば思うほど感情的になって止まらない。あの、違う、とうまい言葉を言えないわたしの横に、青峰は荷物を玄関に置いて座った。肩を引き寄せられ、頭を撫でられる。温かいその手にまた涙が出た。悔しいしむかつくしバカだしエロいし、こんな酷いやつなのにやっぱり好き。それが本当にむかつく。早く止まらないかな、目をゴシゴシとこすると赤くなるから止めろと言われ、その大きなゴツゴツとした手に涙を拭われた。やめてよ、止まらなくなるじゃない。離してよ、と言えばおーまた出てきたと笑いながら頭を撫でられた。わたしのことなんだと思ってるの。

好き、好き、大好き。優しい笑顔を見てやっぱり好きだと思った。青峰は誰かに面倒を見てもらわないと生きていけないと思っていたけど、それはわたしのほう。もう青峰なしじゃ生きていけないの。馬鹿、そう言ってグーパンをしようとしたら軽く受け止められた。素直になれなくてごめんなさい。他人が何を考えているかなんてわからない。けれど、許されている間はかれの優しさに漬け込んで、ぶっきらぼうに甘えようと思う。




120921
脳と心と唇を丸ごと貴方に渡せたらいい、私の全部をそっくりそのまま伝えるのに


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