眩しい光が目に入った。
「あ、起きちゃった?ごめんね」
口ではそういいながらもそこには申し訳なさが微塵も感じられない。何も纏っていない彼女は、少しも恥らうことなく明るい光が差し込むこの部屋をのそのそと歩き回り、昨日の夜俺が放り投げた下着や服を掻き集めた。そして、ベッドの脇にまとめて再び布団の中に潜り込んでくる。
「出かけないんスか」
「うーん、わかんない」
「ならもっかい」
「朝から盛るなバカ犬」
犬によがってアンアン言って腰振ってんのは誰だよ、とは言わない。無視して彼女の体へとしゃぶりつく。彼女の胸元にある鬱血痕は、残念ながら俺がつけたものじゃない。何度も何度も、見せつけられるこの跡。それは胸元だけでなく全身に広がっている。
「青峰っちもこんなに独占欲強いならなんで野放しにしておくんスかねー」
「…っあ!やめて!」
「大丈夫ッスよ、上から重ねてるだけだし。それにこれだけついてれば1個増えたって気づくわけないし」
今までは何があっても絶対につけることのなかった跡を、何の衝動に刈られたのか自分でもわからないまま青峰っちのつけた跡に重ねるようにつけた。ふと彼と間接キスをしているような気持ちになってなんだか気持ち悪くなる。
彼女の大事なところ、そこに触れようとした瞬間、枕元にあった彼女の携帯電話が鳴った。有名なラブソング。ベタすぎてドン引きだ。この音楽を鳴らさせるのは、俺が世界で一番憧れて、世界で一番大嫌いなやつ。
「帰る」
「せーっかく盛り上がってきたのに」
「あんたの下半身がでしょ。シャワーだけ浴びて帰るわ」
「了解ッスー。俺はもう一眠りするんで」
「うん、おやすみ」
先ほどの甘ったるい空気なんてなかったかのように、彼女は布団から抜け出し纏めておいた服一式を掴んでシャワールームへと向かっていった。ムカつく。ムカつく。先ほど鳴っていた携帯を開くとロックがかかっていた。彼氏の誕生日なんか今時古臭いんだよ。腹が立ってマットレスの上に投げつけたそれは、大きく跳ねて床に落ちた。青峰っちとお揃いでつけているストラップが光に当たって輝いていたのでカーテンを閉めた。
外から見れば少女漫画かと思うくらい馬鹿みたいな甘くさい恋愛をしてるくせに、なんでこうして俺のもとにやってくるんだ。青峰っちだけ見ていればいいのに、なんでバスケでも恋愛でも敵わないんだって見せつけられなきゃいけないんだよ。ムカつく。ムカつく。もう来なきゃいいのに。
なんて言ってもそんなの一時の世迷い事でしかない。ほんとは、体だけでもいいから繋ぎ止めておきたい。彼女が何でここに来るのかは知らないけどもし青峰っちにセックスだけは勝てるならずっと俺のところに来ればいい。そしていつかばれてしまえばいい。そしたらもう俺のもとしか居場所がないから。
それでも、束縛の大嫌いな彼女のことだ。初めてつけたキスマーク。もう来ないかもしれない。彼女が俺の思いに気づいてるのかはわからない。お願い、もうこんなことはしないからだから俺の家に戻ってきて。
12.8.16
♪Fantasyが始まる/モーニング娘。
企画無条件幸福様に提出