一言で言ってしまえば、変わっている。どこかいつも遠い目をしていて、学校には来ているのに授業には出たり出なかったり。当然友達に見えるようなクラスメイトは今のところ居ないようにみえる。普通にしてれば美人だしモテるだろうに、どうしても変わっているというイメージが先行しているのかクラスメイトは奇異の目で見ているのが現状だ。





折角の昼休みは知らない女の子からの呼び出しによって潰れてしまった。ベタな屋上でテンプレ化した告白を同じようにテンプレ化した笑顔で愛想良く断ると、女の子は涙を流しながら帰って行った。俺悪くねーのになあ。泣かせたみたいで胸糞悪い。俺も教室戻るか、と思った時にふと、給水タンクの影から延びる2本の脚に気づいた。寝てんのか?裏に回ってみると、そこにいたのはあの俺とは別な意味で有名なクラスメイト。自分の腕を枕に気持ち良さそうに寝ている。つうか、パンツ見えてるんだけど。こうし少し眺めている短い間にも彼女は何度も寝返りをうって、制服のスカートの裾はますます捲れ上がっていった。これヤバイんじゃねえの、と思いつつも視線は彼女のそれに釘付けである。際どい黒というのも俺好みだし。

それにしても。こうして改めて間近で見てみると普通に美少女じゃないか。いや、俺は気づいていたけど。痛みのない色素の抜けたサラサラの髪に、化粧っ気のない肌に生えるピンク色の唇と長いまつげは大きな目をより際立たせている。それに、異常に白いこの肌。細すぎず太すぎないこの太腿は、正直ヤバイ。エロい下着から延びるエロい脚は俺を誘っているようにしか思えない。据え膳食わぬは男の恥とも言うじゃないか。とは言ってもまともに話したことのない女の子にがっつくほど俺の理性は崩壊していないし、狼でもない。


「あー‥‥くそっ‥‥おーい、起きたほうがいいぞー」


下半身が見えない位置にしゃがんで、彼女の体を軽く揺する。おいおい、ブラウスの中まで見えんじゃねえか、やめてくれよ。これ以上やられると俺そろそろやばい。


「‥‥んー‥‥」
「こんなとこで寝てると風邪ひくぞ」
「‥‥‥あー高尾、くん」


正直風邪なんかよりヤバイものがあるから起きてほしかったんだが、そんなことより、俺の名前。


「はよ。俺の名前、知ってんだ」
「‥クラスメイト、でしょう?わたしあんまり教室いないけど。浮いてるし、ね」
「自覚はあるんだ」
「だからどうしようとは思わないけど」


そう言っていつものように遠くを見つめた。横からでもよくわかる長く上向きな睫毛が僅かに風で揺れる。その目は何を映しているんだろう。彼女の目には一体何が映り、どんな世界が広がっているのだろうか。


「教室いない時はいつもここいる?」
「うん。高尾くんも物好きだねぇ」
「ははっ。よく言われるけどこれに関しては周りが見る目ないんじゃねぇの?」
「イケメンにうっかり靡かないように気をつけないと」
「俺はもうちょっと男だって認識してもらえるように頑張るわ。あんま無防備だと襲われっぞ」


そう言って彼女の顎を引き寄せ、唇に噛み付いた。驚くこともなく、目を細めて笑った。ムカつく。


「俺しか見えなくしてやるよ」


滅茶苦茶に、俺だけを見ればいい。





120816
title:リラン


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