今日もジリジリと太陽がコンクリートを燃やしていた。暑いなあ、と手を空にかざしながら見上げてみる。私服だったなら日傘をさして歩きたいところだが、残念なことに今は登校中であり、身に纏っているのは制服だった。さすがに制服に日傘をさす勇気はない。入念に塗った日焼け止めも、きっと汗で流れて意味をなしていないだろう。夏が終わる頃には努力も虚しく黒豚と化しているのは毎年のことだ。はあ、とため息をついて自分の腕を見てみる。まだ夏は始まったばかりだというのに、焼けてきている肌。反対の手でつねってみると、びよんと伸びた。なんとまあ肉肉しい腕であろう。黒豚化待ったなし!


「おはようッス!」
「黄瀬くん?おはよう。こんな時間に会うなんて珍しいね」
「今日は朝練なかったんスよ!この時間に歩くのは久しぶりッスね」


もう校門をくぐるという手前で、後ろから走ってきた黄瀬くんに声をかけられた。同じクラスの黄瀬くん。分け隔てなく気さくに声をかけてくれる彼に、容姿関係なく惚れてしまう子はたくさんいるのだろう。漫画ならニコニコと効果音がつきそうな笑顔で隣を歩く黄瀬くんの顔をまじまじと見てみる。うん、やっぱりイケメン。


「なんかついてるッスか?」
「いや‥黄瀬くんって肌白いよね。羨ましいな」
「夏も朝早いし夜遅いッスからね。考えてみれば焼けるくらい外にいるのって体育の授業だけッスね‥」


黄瀬くんバスケ部だもんなあ、日焼けとは縁がないんだ。背が高くてイケメンで肌白くてバスケうまくてモデルで、それで性格良しなんだから女の子が放っておかないわけだ、と今更ながら気づく。もしかしなくても、成り行きとはいえ一緒に登校しているわたしはものすごく不釣り合いなのだろう。自分の容姿を恨んだことはないけれど、自己嫌悪である。


「でも、健康的な肌の子俺好きッス!」
「‥それはわたしが黒焦げだってこと?」
「えっ!いや、あのそうじゃなくて!」


不貞腐れてみせると隣でものすごく慌てる黄瀬くんは、雑誌や試合中に見る姿とは似ても似つかなかった。しかし、こんな黄瀬くんもやはり黄瀬くんだし、わたしは好きだ。


「嘘だよ、からかってごめんね」
「冗談きついッス‥でも、あの、ほんとに!」
「わかってるよ、ありがとう」


ホッとしたように胸を撫で下ろす黄瀬くんを見て、初めて可愛いなと思った。今度またゆっくり話す機会があったらからかってみよう。




120703


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