山田利吉というのはどうもモテるらしい。


私はよくここ、忍術学園に賃仕事に来ている。学園内の掃除をしたり、食堂のおばちゃんのお手伝いをしたりするのだが、結構割がいい。貧乏な私は暇さえあればここで仕事を貰って働いている。

忍術学園には山田先生という先生がいる。少し怖そうだが悪いことをしなければ優しいし、何よりダンディーなのだ。実は髭好きの私にはたまらない。
その私の大好きな山田先生の息子が山田利吉。妹の様に可愛がっているくのたま達はみな口を揃えてかっこいい!と目をハートにして言うのだ。弟の様に可愛がっている忍たまも目こそ違えど同様。相当慕っていて憧れの対象らしい。

私にしてみれば山田利吉は天敵であるため間違ってもかっこいいと思うことはない。むしろ初めて見た時「あら、けっこうな美形」と思った自分を呪いたい。山田利吉が口を開いた瞬間ソッコーでその言葉は取り消した。

「随分ボサボサした髪だな。本当に女か?」

私のこめかみに青筋が走った瞬間だった。

「余計なお世話ですね。そんな女に構わずさっさと用事を済ませてはいかかでしょう」
「でもその髪は4年生の斎藤くんに見てもらったほうがいいな、酷すぎる。趣味は女を捨てることだったりするのか?そうさせてもらうよ」

なぜ外面良男の山田利吉が私にだけは初めから敵意剥き出しできたのかはわからないが、よほど私のことが目についたのだろう、嫌いなのだろう。上等じゃないか、私も嫌いだ。


「すみません山田先生。愚痴を聞いてもらってしまって…」
「いや…いつも利吉がすまないね。ところで利吉は今日は仕事で来たのかい?」
「学園長先生に話があるって言ってました」

こうやって、山田利吉が学園に来て私に突っ掛かって来る度に、山田先生に愚痴を聞いてもらっている。最初はお世話になっている先生に息子の悪口を言うのもどうかとは思ったが、考えてみれば私は悪くない。私から喧嘩を売ったことなど一度もないのだから。

「利吉が素顔を見せるのは珍しいのだかね」
「よっぽど私のことが嫌いなんじゃないですか」
「……。ところで利吉も君ももう18歳か。お嫁に行くようなことは?」
「悲しいことにまっっったくご縁がありません…」
「そうか…」

それっきり山田先生は私のほうをちらちらと見ながらうーん、と考え事を始めた。邪魔しては悪いので一言お礼を言って部屋を出る。

「全く山田先生に心配をかけるなんてなんてダメ息子」
「誰がダメ息子だって?」

いきなりの声にびっくりして振り向けばそこには先程と同じ意地悪そうな顔をした山田利吉。これだから忍者は嫌なんだ、後ろにそっと現れて脅かしやがって!

「お話が終わったのならさっさとお帰りになられたらどうですか」
「ダメ息子なんて言われたらそうそう簡単には立ち去れないな」
「先生はあなたの将来が心配みたいですよ。早く素敵なお嫁さんを見つけて私に二度と話しかけないでください」
「父上がそう言っていたのか?」
「…今嫁ぐ予定があるのか聞かれただけですが」
「そうか…」

山田利吉は先程の山田先生と同じようにちらちらと私を見ながら腕を組み何やら考え始めた。今のうちにさっさとこの場を去ろう。と思ったら腕を捕まれる。…全身に悪寒が走った。

「離してください、仕事があるので」
「多分君と私はそういう運命になるだろうな」
「は?」
「お互いいい歳だしら早いほうがいい」
「だから何が」
「何って結婚だろう」



結婚?



「だだだ誰が」
「私と君に決まってるだろ」



何でそんな話しになったんだ?私と…山田利吉が……結婚!?

「今すぐ離してください気持ち悪いです」
「君は私が好きだし私も君が好きだ。何の問題もないだろ」
「何を言っているんですか、私があなたを好き?どうしてそうなるんですか?しかもあなたが私を好き…………………………………好き?」
「そうじゃないのか?」

……どうしてそうなった?というか山田利吉が私をす…好き?いやいや何かの間違いだ、誰か間違いだと言ってくれ。だって、あの、性悪外面良男の山田利吉が、

「しししし失礼します仕事があるので!」

脳みその容量が既に限界を超えそうだ。とりあえず、頭を冷やしたい!そして夢ならば今すぐ覚めてほしい!
私は捕まれた腕を振り切り一目散にに逃げた。

「相変わらず照れ屋だな」



どうしてこうなった!



「利吉さんがあの人を好きだなんてバレバレなのにね」
「気づいてないのは本人だけよ」
「好きな人ほどいじめたくなるのね〜。やっぱり利吉さんかっこいいわ!」




110225

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