美人というのは多分こういう人のことを言うんだろうなあ、と黒板の前でC組の幸村くんと談笑している柳くんを見ながら考えた。和風美人っていうの?品があって、あのかちっとしたガードの固さみたいなのがなんていうか、エロいよね。幸村くんはどっちかというと洋風な美人さん。もちろんすごく綺麗で女として劣等感を感じるけど……わたしが惹かれるのは柳くんだ。


「何をそんなに見てるんだ?」
「わっ!柳くん…あれ、幸村くんは?」
「幸村ならとっくに教室に戻ったが」
「知らない間に」
「幸村に用があったのか?」
「そうじゃないけど」


ぼーっと考えてるうちに状況がだいぶ変わっていたらしく、目の前に柳くんがいて驚いた。じろじろと見ていたのはばれていたのだろうか。だとしたら相当恥ずかしい。


「じゃあ何を見ていたんだ?」
「柳くんが…」


ここまで言って、続きの言葉をごくりと飲み込んだ。なんか、怒られそうな気がする。女っぽいって勘違いしてると思われそうだし。あの切れ長の目に睨まれたら寿命が10年縮むといっても過言ではない。


「あの、」
「全部口に出ていたぞ」
「えっ」
「馬鹿かお前」
「うっそ…」


自分でも馬鹿だと思った。恐る恐る柳くんをチラ見すると別段気にしていないようだからよかったけど。


「柳くんて着物とか着ないの?てか着てよ」
「最終的には命令形か」
「あんま気にしてなかったみたいだからつい」
「全く着ないな。弦一郎は着ているが」
「真田くん……美人とは程遠いね」


想像したらかっこいい通り越して最早勇ましかった。ただの武士だった。真田くん刀とか似合いそうだもん。そういえば真田くん剣道もやってるって言ってたっけ…?柳くんはそれよりも扇子持って縁側とかピッタリな気がする。


「ていうか柳くんは着物っていうより浴衣だよね!着ないの?」
「全く」
「今度着てよ!見たい!」
「いつ着ればいいんだ?」
「着てくれるの!?そうだなー1番近いのは来週の夏祭りだよね、そこで!」


意外にも柳くん乗り気みたいで心の中でガッツポーズをした。やった、柳くんの浴衣!似合うだろうなーますます美人だろうなーエロいな絶対!和服好きだから嬉しい。ここまで考えてわたしかなり変態っぽいけど気づかないふりをした。


「また声に出ているが」
「えっ」
「それにお前、大事なことに気づいてないぞ」
「わたし変態じゃない」


否定はしてみたが、やはり、変態だ、とバッサリぶった切られてしまった。…恥ずかしい。


「変態だろうがどうでもいいが、気づいているのか?」
「何に?」

「それは一般的にデートの誘いと言うんだぞ」



あれ、なんか顔から火が出そうだ。さっきまでの会話の一部始終を思い出してみる。…わたしバッチリ誘ってるよね。

うわー…うわー…恥ずかしい。気づかないって怖い。柳くんのほうを見れないんだけど。でも、


「「デートでもいいんじゃない」と、お前は言う」
「…」
「祭は土曜日か…覚悟しておけ」


柳くんはわたしの目を見てにやりと笑った。
熱い。熱い。顔が熱い。なんていうか、なんなんだろう。興奮してるの?わたし。
そんなわたしを放って教室を出て行った柳くんはなんて罪深い人なんだ!





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title 誰そ彼

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