「待って越前くん!」
「……」
「…リョ、リョーマくん………」
「いい加減慣れてくれない?こっちまで恥ずかしくなるんだけど」



と言われたが慣れない。慣れるわけがない。隣に並ぶだけで顔に熱が集まるのに。顔を見たら心臓が張り裂けそうになるのに。



「ほら」



手を引かれたら何も考えられなくなるくらい頭の中が真っ白になるのに。










「リョ、リョーマくんは買い物とかあんま好きじゃなさそうだよね…」
「別に。嫌いじゃないけど」



無理してるのかな、なーんて。思って口に出したあと失敗したなって思った。自分から雰囲気悪くなるようなことしてどうするのわたし。思った通りなんとも言えない居心地になってしまった。

で、も。

心臓の鼓動は鳴り止まない。ぎこちなく繋がれた手はきっと汗ばんでる。
がさつだったわたしがリョーマくんに恋をして、メイクやオシャレを勉強し始めた。言葉遣いや身振りも直した。それくらい好きで、好きで。
こんなにも人を好きになるのは初めてだった。どうしていいかわからなくて。周りにからかい半分で応援されながら、手探りで、時々嬉しくて爆発しそうになったり、悲しくて家でこっそり泣いたりしながら掴んだ、この恋。



「俺は…、」
「?」
「どこでも、あんたがいればいいから」



たくさん泣いたことも、無駄じゃないんだよね。だって、こんなに幸せなんだもの。










「これ!似合う?」
「いいんじゃない?」
「さっきからそればっかり!」



いざお店を見てたら可愛い服やかばん、アクセサリーにテンションがあがって、柄にもなくはしゃいでしまった。気がつけば両手に紙袋2つ。申し訳ないことにリョーマくんも1つ持ってくれている。



「見かけによらず豪快だね…」
「まあ、ね(昔はこれ以上だったなんて言えない…)」



そんなたわいもない会話をしながらも着々と戦利品をゲットし続けていると、いつの間にか荷物が溢れ財布の中が悲惨なことになっていた。


「休憩しようか」
「そうだね…疲れた…」
「それだけ買えばね」



うっ…恥ずかしい。ていうかお金足りるよね?大丈夫だよね…多分…。両手に大量の荷物で手は繋げないし。わたし何やってんだろ!

その時だった。



「あ…」



ふと、目に入った赤いハートのネックレス。小さいけれど、綺麗に輝いてるそれに、わたしは釘付けになる。



「(でもだめだ…このあとのご飯と帰りの電車賃が…もうわたしのばか!)」
「綺麗だね、これ」
「うん…今さっきまでの衝動買い後悔してるよ」
「ちょっと待ってて」



リョーマくんは持ってくれていた荷物を地面に起き、ちょっとごめん、と言ってそのネックレスを持ってレジに………え。



「えち…リョリョリョーマくん!」
「また…。はい、これ」
「え、いや、でも!」
「まだ何もあげたことなかったし」
「だって…」
「俺が持ってても仕方ないじゃん。だから」
「……ありがとうございます…」



あれ、なんだろう。申し訳ないんだか嬉しいんだかわかんない。どうしよう。目頭が熱い…。



「ちょ、やめてよ!」
「ご、ごめんね…!でも…」
「恥ずかしいから行くよ!」



そう言ってわたしの手を引くリョーマくん。また。止んでいた鼓動がドクドク、ドクドクと速さを増す。顔も熱い。手汗もすごいに違いない。



「ま、待って!手汗がね、」
「いいからそんなの。あんたの顔のほうがやばいから」
「え?!」
「別にどんな風にになってても俺はいいけど」
「…え?」



変わらず手を引いて前を走るリョーマくんの耳が僅かに、赤い気がする。それを見て余計に熱くなるわたしの顔。離してほしい、けど離してほしくない。顔を見ないでほしい、でも顔を見たい。



「そこの公園、行こうか」
「うん」



リョーマくんがわたしの顔を見た。交わる視線に体がぞわりと震える。そして、わたしはリョーマくんの隣に肩を並べた。



「行こう!」



今度はわたしから。リョーマくんの手を握り直して二人で並んで進んだ。ぎこちないけれど、一歩一歩。





111020
HAPPY BIRTHDAYあむちゃん!
♪恋ING/モーニング娘。

tnx rocca

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