「あの」
「‥‥」
「待ってよ!は、話があるんだけど!」
「‥‥」
「おおお願いします止まってください少し時間をくれませんか!」
「‥手短にね?」
振り向いた彼の顔は素敵な笑顔でした。でも私には見えてしまったのです。彼が纏う真っ黒なオーラが。
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一刻も早く精市に謝らなきゃいけない。そう思いながらも恐怖が勝っていた私の心のせいで、あっという間に放課後を迎えてしまった。怖くてメールも出来ず、とりあえず部活が終わるのを待つことにした。始めは人がたくさんいた校門付近も暗くなるに連れて閑散としていき、一旦部活終了時間近くになるとまた増えたが、すぐに静かになった。何のイジメなのか、今日のテニス部の練習はいつもより長い。多分、精市は私が待ってるのを分かっていてわざとやってるんじゃないかと思えてならない。あの悪魔め。そう思っていると遠くからテニス部連中がやって来る声がした。ちらっと見ると、そこには精市の姿もある。
「あの」
「‥‥」
私は勇気を振り絞って声を出した。しかし精市は無視して私の目の前をスタスタと通り過ぎる。
「待ってよ!は、話があるんだけど!」
「‥‥」
尚も無視し続ける精市。更に歩くスピードが早くなる。しかしここで諦めるわけにはいかない!
「おおお願いします止まってください少し時間をくれませんか!」
そしてやっと精市はぴたりと足を止めた。
「‥手短にね?」
やらなきゃやられる。私はこの笑顔で覚悟を決めた。
死ににいきまああああす!
100605