「俺のことを馬鹿だとか言ったらしいね」
何故知ってるんだ。私が冷や汗を垂らしながら精市からの視線を逸らすと、その先ににやりと笑う仁王を発見した。あの野郎告げ口しやがったな‥‥!仁王は丸井の前の席。あの時机に伏せてたからてっきり寝てるのかと思ってたのに仁王めブッ殺だ。
「や、それは別に深い意味は‥‥」
「何、咲は俺より頭がいいの?」
「そんなことないです」
「当たり前だろ、咲はいくつ頭のねじ外れてるの」
いったいぜんたいどこをどう切り取ってみればこれが彼氏彼女の会話に見えるだろうか。私が第三者だったとしたら間違いなく見えない。精市は変わらず冷めた笑顔で、私を見ている。
「どうやって待ってたの?暇だったでしょ」
「(暇だと思うならなぜ待たせる)あそこで練習見てたよ」
「ふーん、誰見てたの」
「精市だけど」
「ならいいや」
たまに可愛いなって思うのはこういうときだ。恥ずかしげもなくナチュラルに嫉妬心を見せてくるのがすごく可愛い。これがあるから、私はちゃんと好きでいてもらえてるんだなって安心できる。
「へへっ、せーいちっ」
「何抱き着いてるの、キモいよ」
「いーもん」
例えキモいとかウザいとか言われても私は精市が大好きだ。
100526