「おはようさぶろ、う…?」
「あぁ…おはよう雷蔵…」
無理やりした徹夜開けの朝は地獄でした。
*
「それじゃあほとんど寝てないんだ」
「何度も寝そうになったけどな、最早気合いと愛だ…」
朝、教室に着いた途端俺は机に突っ伏して寝た。そのまま授業も爆睡。気がつけばもう昼で、教室には雷蔵、ハチ、兵助が勢揃いしている。
「寝ちゃいけない寝ちゃいけないって思っても瞼は重いしでも何とか色々覚えなくちゃいけねえし…」
昨日飼育当番を終え家に帰った後、まずパソコンをつけた。とりあえずあの嘘を本当にしなくてはならない。そのために片っ端から情報を集めることにした。まず、駿河から聞いた情報を当たる。話によると、篠崎さんは部活の他にここら辺に住む学生で構成されたオーケストラにも所属しているらしい。調べてみると、そのオーケストラの公式ホームページがあり、色々と読んでいくうちに篠崎莉子という名前を発見した。篠崎さんはコンサートミストレスとやららしいが……一体なんだそれは。更にそれについて調べると、そのコンサートミストレスとはオーケストラのリーダーみたいなやつだとわかった。リーダーって、よく分からないけれど多分凄いんだろう。オーケストラって人たくさんいる、よな。しかも大学生とかもいるオーケストラらしいし…その中でリーダーをやっているっていうのは相当なはずだ。何だか凄い人に恋をしてしまったのではないかと思った。
そして今度は曲について知ることにした。篠崎さんのオーケストラに今までの公演で演奏した曲があるのでリストアップ。更に俺でも知ってる有名な作曲家の有名な曲も調べてリストアップ。しかし交響曲やら協奏曲やら色々ありすぎて何から聞けばいいのかさっぱりわからない。交響曲とか協奏曲の違いもわからない。とりあえずまずは篠崎さんが弾いた曲を動画サイトで検索して聞いてみる。…ここからが大変だったのだ。時刻は既に深夜1時。飼育当番や帰ってきてからずっと調べていて疲れている中でのクラシック。何度寝かけたことか。途中意識を飛ばしながらも色々と聞き込んでいたらもう朝だったのだ。
「ほら見ろよ、iPodにも入れてきたんだ…今聞いたら即寝だけどな…」
「言ってる傍からもうあぶねーよ」
しかしこんな俺を見て3人は本当に俺がマジだということを分かってくれたらしく、少し驚きつつも協力してくれると言ってくれた。
「音楽史とか調べてきてやるよ」
「僕は三郎が聞きやすそうな曲探してくるから」
「三郎が聞きやすいクラシックなんてあんのかよ…」
「ありがと…」
その言葉を最後に俺は再び夢の世界に旅立った。
“ありがとう”
俺がそう言ったのは随分久しぶりらしく、みんなして驚いていたことを俺は知らない。
100326