「あの子はD組の篠崎莉子ちゃん。委員会が一緒で」

「なぜ早く言わなかった」

「知るかそんなの!」



ハチの至極真っ当な突っ込みも無視するほど俺は彼女に飢えていた。つうか何だ、委員会が一緒?美味しすぎるだろ!



「去年は?」

「去年も一緒だった。どうだ、羨ましいか?」

「死ね」



ひでえ!と言われたが今のは仕方がないだろう。ハチが性格がいけないのが悪いんだ。

まぁとりあえずその話は置いておくことにする。今重要なのはその篠崎莉子ちゃんについての情報を集めることだ。現在の手持ちが名前に委員会だけだなんて不利すぎる。



「他に知ってることねえの?」

「えっと確か室内楽部の部長だったか?」

「しつないがく?」

「あぁ、あの弦楽器弾いてる部活か」

「つうか篠崎のことなら別な奴に聞いた方がいいぜ。おーい、駿河ー!」



ハチは教室の入り口の近くで友達と話をしていた駿河を呼んだ。確かハチと同じ生物委員会。因みにこの女は俺の数少ないまともな女友達の1人だ。俺を見ると嫌な顔してくるかすっげー笑顔で嫌がらせをするか嫌みを言ってくるかというムカつくやつではあるが、何だかんだでその雰囲気は居心地がよかったりする。



「何、竹谷?」

「それがさー、三郎が篠崎を好きになったらしいんだよ」

「は?!ちょっとどういうこと?あんたうちの子を毒牙にかけようとしてるでしょ!」

「ちげーよバカ!これでもマジなんだよ!つうか何だようちの子って」

「私はねえ、莉子の小学校からの大切な友達なの。あんたみたいな女ったらしの奴なんかに莉子を渡すわけないでしょ!」

「うるせー!良いから教えろ!だいたいいつもと同じだったらこんな回りくどいことはしねーんだよ」



そうだ。いつもの俺なら可愛い女の子がいたら声をかけにいって適当に甘い言葉耳元で囁いてアドレスを聞いて帰ってくる。なのに今回はそうしない。そんなことも思いもしなかった。それは、俺がやってはいけないことだと分かっているからだろうし、そんな安っぽいことをしたら彼女に失礼だと思っているからだろう。全く自分のことだと言うのに驚きだ。こんな風に用意周到にできるのだから、もしかしたら意外と恋愛に向いてる質なのかもしれない。



「じゃあ、もう2度と他の女に会わないって誓って」

「分かってる」

「アドレスも全部消して」

「もう消してある」



そう言うと、流石に駿河も雷蔵達も驚いていた。それだけ本気だということをわかってほしい。そんなに驚くことなのか。俺は、この人生初めての恋を叶えたいんだ。



「昨日の夜に全部消して着拒にした。これでいいだろ」

「鉢屋…あんた本気なの?」

「あぁ」



駿河は観念したのか俺の熱意に負けたのか、篠崎さんのことを話始めた。そして、暫くした後に、いきなりそうだ!と思い出したように手をポンと叩いた。



「何だよ」

「私に良い考えがあるの」

「何々?」

「耳貸して…」



言われたとおり駿河の近くに寄る。そして俺はこの日から駿河を神と崇めることとなるのであった。




「駿河、お前は神様だ」

「一週間、購買のパン」

「喜んで!」



あぁ放課後が待ち遠しい。金?そんなもん気にならないほどの美味しい話を駿河に持ちかけてもらったんだ!ハチもありがとう。俺は今猛烈に幸せだ。





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