「それじゃあ今日は、この曲の鑑賞をしましょう。聞き終わったら感想を提出すること」
俺は音楽が好きだ。好きと言っても人並みではあるが、割と幅広いジャンルを聞いている。洋楽も好きだしジャズなんかも聞いたりする。
が、クラシックというものだけはどうも苦手だ。確かに綺麗だとは思うけど…それ以上は何もない。眠くなるしなんか難しい。高貴な人しか聞かないイメージがあるから取っ付きにくいのもあるかもしれない。
音楽室の巨大なスピーカーからゆったりとした音楽が流れ始めた。楽器も全然分からないから聞いてたって何も楽しくない。せいぜい子守歌代わりである。そして気がつくと授業は終わっていた。
「はい、じゃあ帰りに感想を提出すること!終わり!」
「「「ありがとうございましたー」」」
みんながガタガタと席を立つ中俺はようやく目が覚めた。
「やべ、寝てた」
「始まって1分も経たないうちに寝てたよ、三郎」
隣の席の雷蔵が俺を見て苦笑した。音楽の時間はこんな顔をさせてばかり。
「雷蔵見せて」
「…はいはい」
「雷蔵俺もー!」
少し離れた席のハチが叫んだ。ハチは駄目だ、音楽に関わらずいつも寝てるからな。俺にははテスト前に雷蔵にノートを貸したりするから、というのがある(自慢じゃないが俺は頭がいい)。
「しょうがないなぁ」
それでも優しい雷蔵はハチにノートを見せてあげるのだ。これが兵助ならたまには自分でやれと言うところだが、雷蔵は違う。究極に優しい。……その分怒ったときはすごく怖いが。
「よし、できた」
「終わったー!」
こうして成績優秀者鉢屋三郎の大事な音楽の評定は守られたのだった。
100324