「凛せんぱーい!!あ、笠松先輩もいる!」
「俺はついでか?!」
「そんなことないッス!」


昼休み、笠松と部活の話をしているところになぜだか黄瀬がやってきた。普通、後輩が先輩の教室に来るのは緊張する筈なのに、黄瀬は御構い無しである。黄瀬が来ることでざわめく教室に、色めき立つ廊下。なんでこう、黄瀬はギャラリーを作らなきゃ生きていけない人間なのかね。


「凛先輩!無視ッスか?!」


何が違うんだろう。黄瀬だって早川と同じようにわたしのことを慕ってくれているのに。それはよくわかる。黄瀬も大型犬に似ている。好きな後輩として、共通するポイントは多い筈なのに、なんかこう、


「ウザい」
「ひどっ!!」


隣の笠松はよく言った、というように眉間に皺を寄せていた。無駄に爽やかなとことか自意識過剰なところが違うのかね。早川も爽やかだけど。黄瀬も自意識過剰っていうか….まあかっこいいのは本当。あれ、何でだろう。


「何しに来たの?」
「暇だったんで!」
「友達いないの?」
「違うッス!!!!」


じゃあ教室戻りなよ、そしてその右手に持つお弁当を食べてきなさい。黄瀬と弁当食べたい女子なんていっぱいいるのだから。それこそ、星の数ほど。
それを伝えると、俺は先輩達と食べたいッス!なんて言うもんだから、笠松はさらに皺を深くさせた。わたしは、悔しいことになんだか嬉しくなってしまい、しょうがないなあ、と黄瀬に付き合うようにカバンの中に入っていたお菓子の袋を広げた。


「笠松も食べる?」
「いらねぇ。つうか昼飯のあとによくこんなの食えるな」
「お菓子は別腹っていうじゃない」
「あ、そうだ」


弁当を広げていた黄瀬は思い出したかのように声をあげて、ポケットに手を突っ込んだ。凛先輩、手出してくださいと言われ、後輩に命令されるなんてと思いながらしぶしぶ掌を宙に向けると、そこに広げられたのは、お洒落な紙に包まれた、いかにもチョコレートというそれ。


「GODIVA?!」
「あげるッス!」
「黄瀬大好きだわ!」
「まじッスか?!」
「おい黄瀬、気づけ」


3人揃えば自然とバスケの話になる。今日の朝練の話や、今週末の練習試合の話。黄瀬は誠凛に負けて姿勢が変わった。それは部活全体の雰囲気をも変えた。今後、どんどん黄瀬を中心としたチームになっていくのだろう。はじめは不安だった今年の1年生も、今はこれから先が楽しみである。今年こそ、ふたりの真剣に話す姿、そして練習中のみんなの姿を思い出しながら、わたしも頑張ろうと改めて心に誓った。




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